決め手は位置情報--アイリッジ・小田代表に聞く「O2O最前線」(前編)

磯雅範(カケザン)2014年10月31日 08時00分

 この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、“デジタルマーケティングの今”をお伝えする。

 O2Oという言葉が市民権を得てから久しいが、企業によってその温度差はまだ激しい。「これぞO2O」という姿はいまだ定まっていないように思え、関連するサービスの進捗の程度は遅い。そこで今回と次回は、O2O分野のエキスパートであるアイリッジ代表取締役社長の小田健太郎氏に、O2Oの本質とその効果、現状や課題について聞いていく。


アイリッジ代表取締役社長の小田健太郎氏(奥)と、著者のカケザンCEOである磯雅範

 「O2Oという概念が言われ始めたのは3年ほど前だと思います。その契機は、やはりスマートフォンの普及です。手元にあって常時見ることのできる端末に情報を送り込んでリッチに表示させることができる。それで集客や購買を促進できるのではないか、というものです。

 フィーチャーフォンの時代に比べて、位置情報が数段、活用しやすくなりました。だから、お店の近くにいる人、入店者に対して、適切なタイミングで喜ばれる情報を送れるわけです。O2Oと言われ出したきっかけは、一重にそこにあると思っています」(小田氏)。

  • 小田健太郎氏

 同社は、フィーチャーフォンを端末として活用したマーケティングの取り組みでスタートした会社だ。制約の厳しい中で、当初から位置情報の活用に取り組んでいたという。そこにスマートフォンが登場し、普及していった。スマートフォンでは、それまで大変だった位置情報の活用がスムーズになった。そこでスマートフォンにシフトしてモバイルマーケティングを深化させているときに、O2Oの波がやって来たというわけだ。

 同社のベーステクニックは、“popinfo”というものだ。これは「位置情報×属性×時間」を組み合わせたプッシュ通知のシステムで、ジオフェンスと呼ばれる指定エリアに近づいたり、入ったりしたことを感知して適切なクーポンなどを配信するサービスだ。

 ちなみにジオフェンスは、仮想的な地理的境界線の意味で、ある地点を中心とした半径(たとえば1キロ)の円の円周部に仮想のフェンスを張り巡らせる。そのフェンスを越えて中に入ってくるスマートフォンに対して、メールを送ったり、クーポンを配信したりする。逆に、そのフェンスを出た場合に、自動的に自宅に「帰るコール」をするアプリなどもある。

 位置検知の技術としては、GPSとiBeaconを使っている。たとえばスーパーに近づいたらGPSで位置を検知して「タイムセール」の情報を流す。あるいは商業施設や百貨店の1階にiBeaconの発信機を設置しておいて、入店したら「いらっしゃいませ」とお迎えし、即座に属性に応じた情報を提供する。

 「この機能を活用すれば、ユーザーが必要とするタイミングで、必要な情報を受け取ることができるようになるわけです。もっとも、実態はまだまだで、3年ほど経ってようやく、その部分の重要性が流通各社、小売業や飲食業の方々など、お店という顧客接点を持った会社さんを中心に理解されてきたところだと思います。

 マスコミなどでは、O2Oという言葉はいささか陳腐化してきたかもしれませんが、実態としては、むしろこれから数年が開発・活用のピークなのではないでしょうか。購買履歴などと紐づけて、お客様にレコメンドするといった一歩進んだOne to Oneマーケティングにトライする企業もやっと登場してきたところです」(小田氏)。

 これはフィーチャーフォンの時代からいわれていたことだが、PCと違って携帯へのメールは、受信したらすぐに開く人が全体の80%以上いる。そのため、それこそ2002年頃からモバイルがリーセンシーメディアだと位置付けられてきた。それは今でも変わらない。すぐ開封されるからこそ、その効果は高く、たとえば店舗にいる間にさまざまな情報を提供する価値があるのだ。

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