皆さんもご存じのように、台湾は親日の国である。日本のファッション誌も人気であるし、アニメやその他のコンテンツ文化の消費国でもある。そうしたところを見ても、日本文化との相性もいい。センスにも似通ったところが多い。
そのため、日本企業はもっと台湾に進出したほうがいいと思っている。確かに市場規模はそれほど大きくはないが、成功確率は決して低くないと感じる。
ゲームで言えば、日本のディベロッパーやパブリッシャーから見ても、台湾はますます有望な市場だろう。実際に、昨年の夏以降、日本の大手企業はこぞって台湾市場に参入している。メディアの視線も熱い。
そんな状況を反映して、D2Cにもコンテンツプロバイダからの問い合わせが殺到している。それで「台湾でビジネスを始めるコツ」を教えるといったコンサルテーションサービスも強化しているところだ。その項目は、マーケティング全般はもちろん、財務、税務、さまざまな制約や規定、制度、はたまた異業種でのビジネスマッチングなど幅広い。
いくら親日の国でセンスが似ているといっても、そこは外国だから、お国柄というものもあり、日本で流行ったモノが必ず台湾でもウケるというわけではない。逆に、日本でウケなかったものが台湾ではウケることもある。
たとえば、台湾はソーシャルメディアの浸透率は高いのだが、ソーシャルゲームには向いていない市場だ。昨年、日本で人気のソーシャルゲームも大挙して台湾に進出したが、結果はよくなかった。
ダウンロードはされるのだが、収益が上がらない。なぜなら、ソーシャルゲームは数人の仲間たちが同時にアクセスして協力して敵と戦うというのが基本なのだが、台湾の人は日本人ほど協調性がない。スケジュールがバラバラで、無理をして時間を合せてまで同時に同じゲームをしようとは思わない。だから、一人で遊びたいときに遊べるゲームのほうがいい。また、国民性なのだろうか、団体戦よりも個人戦を好む傾向があり、それがゲームにも表れているように思われる。
台湾の場合、日本に比べて欧米のゲームも数多く普及しているため、目移りしやすい。実際にソフトウェアのランキングの移り変わりは激しい。飽きるのが早いのだ。そのため、たとえば日本で2年間ヒットしているゲームが、たった3カ月で飽きられるといったこともしばしば起こる。難しすぎても離脱する。チョイスが多いから、こだわらないというところも覚えておかないといけない。
理想的には、短期的にドンと稼ぐというビジネスモデルが似合っている市場だ。ところが日本のコンテンツホルダーは開発費用に非常にお金を掛けているので、そうもいかない。できるだけ長く稼ごうとする。そこをどう考えるか、日本ですでに開発費分を稼いだ商品を台湾に持っていって短期的にさらに稼ぐなど、ビジネスモデルは検討したほうがいい。
あるいは日本特有のガチャはどうか。日本では1人のユーザーに集中して負担が掛からないようバランスを取るよう規制されている。しかし、海外にはそうした規制はない。そのため、日本での規制のまま台湾に持っていくと、そこで稼ぎきれないという問題も生じる。
もう一つ、注意すべきなのは、成功の呪縛だろう。日本で成功したプロモーション手法をそのまま現地でも展開しようとするケースが多い。それで失敗する。
たとえば、日本ではあまり宣伝コストをかけずに、ソーシャルメディアでのバイラル効果に頼って、うまくユーザーを巻き込んで、DAU(アクティブユーザーの数)も高くなって成功するといった例も少なくない。そのやり方をそのまま台湾で点火してもうまく行かない。
ソーシャルメディア大国である。バイラルが起きないわけではない。しかし、市場があまりに大海で荒波が押し寄せているようなものだ。日本と同じ程度のバイラル効果では、それこそ荒波にその効果がかき消されてしまうというわけだ。
だから気がつかない。気づかせるためには、どうしてもスポットでの広告展開が必要になる。それだけ短期的な資本投下は必須だ。そうした違いもある。
あるいは、いま日本で流行っている動画プロモーションはどうか。2014年、日本では動画プロモーションがすごく話題になった。この傾向を世界に先駆けていると誤解している向きも少なくないようだ。
動画広告は、むしろ日本は後発だ。台湾や中国では日本で流行る3~4年前にショートムービーが流行った。企業がたくさん作ってYouTubeなどに流した。そうした流行が下火になったころに日本で流行り始めたのだ。それを台湾に逆輸入させても効果は期待できない。皆、飽き飽きしているからだ。
そういうことも間々ある。インド、インドネシア、マレーシアなども識字率が低いから、もともと動画広告が主流だった。テレビの普及率も低いから、PCなどで閲覧できるショートビデオで潜在ユーザーに訴えるのが効果的なわけだ。説明商品もわかりやすいく、とても流行った。
このように、注意する点はあるのだが、それらを踏まえたうえでならば、台湾進出にはまだまだ可能性があると注目している。
(D2C 国際事業室 台湾統轄マネジャー兼台湾支店支店長 呉 恵文)
モバイルマーケティングの総合オピニオンサイト「D2Cスマイル」
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」