スマートデバイス戦略はこれから本格化する(前編)

磯雅範(カケザン)2014年07月14日 08時30分

 この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、“デジタルマーケティングの今”をお伝えする。

 今回からは、マーケティングにおけるスマートデバイス戦略について、前後編にわけて紹介しよう。

CODE時代に適合したモバイル戦略とは?

 「CODE」、それはCreativity Of Digital Experienceの略で、日本語にすれば「創造的デジタル体験」。統合マーケティングの時代にあって、「顧客にとってのデジタル体験を、いかに創造的なものにするか」をマーケティング施策の眼目に置くという意味だ。D2Cが今年打ち出したコンセプトで、コードアワードという賞を創出した。

 どの企業においても、今後、顧客体験価値を高めることは非常に重要な課題となっていく。そのためには当然、「モバイル=スマートデバイス」の役割は非常に重要になるが、いかなるマーケティング施策も、モバイルだけで完結するものではない。

 カケザンではそうした現状を鑑みて、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスを活用したマーケティング手法「+Mobile」の重要性を現場レベルで改めて喧伝しているところだ。マーケティング活動に効果的にスマートデバイスを組み合わせることで、リーチが広がり、マーケティング効果を飛躍的に増幅できる。

 「今さらなぜ?」と思う人もいるかもしれない。確かに、すでにモバイルを活用したマーケティング事例は数多く提案、実施されてきた。D2Cでも、2001年にソリューション事業部を立ち上げ、各種のモバイルキャンペーンの企画立案や運営、キャンペーンサイトの制作などの事業を行ってきている。

 しかし、これまでの戦略とこれからの「+Mobile戦略」は実は大きく違う。それは、以下の諸点による。

  1. 世の中はまだまだマスメディアを主軸に置いたマスマーケティング全盛の時代。ようやくPCでマスマーケティングを補完し始めたところで、モバイルの活用は限定的、補完的なものに過ぎなかった。統合マーケティング前夜だ。
  2. 日本におけるモバイルマーケティングはフィーチャーフォンを主体として育ってきたが、いよいよフィーチャーフォンに代わってスマートデバイスが当たり前のツールとなってきたことで、やれることが大きく違ってくる。
  3. 通信環境が圧倒的に違う。3GからLTEへ、そしていよいよ4G(LTE-Advancedなど)が登場しようとしている。これにより、通信速度はケタ違いに速くなるだろう。

 このように、外部環境は大きく変化してきている。そんな時代だからこそ、あえてもう一度「+Mobileマーケティング」の重要性を企業の経営者、マーケティング担当者には理解してもらいたい。

“共創コミュニティ”の実現めざした「My Starbucks idea」

 今の時代とはどのような時代だろうか。もちろん、時代を切る軸は多様にあるが、まず言えることは「生活者主体の時代」であることだろう。生活者は積極的にさまざまな体験をして、経験値を貯め、企業側が発信するいろいろな情報や価値を、それぞれの基準でフィルタリングして判断している。

 さらに、生活者の多くはSNSをうまく活用し、自分の体験や評価を積極的に発信して、バイラル効果を引き起こしている。むしろ、これまでは情報の発信者であった企業側が、そうした生活者の活動や発信を一所懸命にフォローしようとしているようにすら思われる。

 「共創」という言葉がある。ここで言う共創とは、生活者と企業の協働作業を意味する。さまざまな事例があるが、共創を成功させる絶対的必要条件は、中長期的に、そして継続的に生活者と対話のできるプラットフォームの確立なのだろうと思う。

 この成功例を2つ挙げよう。

 1つは「MY Starbucks idea」というスターバックスのオンラインコミュニティ。スターバックスが業績不振に陥っていた2008年、CEOに復帰したHoward Schultz氏が企画して3月の株主総会で公開したものだ。


「MY Starbucks idea」

 誰でもこのサイトにアイデアを投稿でき、投稿されたアイデアを閲覧し、投票することもできる。そして、そのアイデアの中から実行されたものに関する報告も閲覧できる。

 Schultz氏は、スターバックス再生のための7つの大きな取り組みを決めたが、これは、そのうちの「お客様との心の絆を取り戻す」ための取り組みの一つと位置付けられた。サイトには、公表後24時間以内に7000のアイデアが寄せられ、公開から1週間で10万人が投稿し、2カ月間で4万1000のアイデアが集まった。

 さまざまな成果が生まれたが、特にリワードプログラムに対する生活者の反応がすぐに返ってくることで、それらを修正、また全国展開などがタイミングよく実行できたことが大きかった。そもそも、ここに寄せられたアイデアを分析することで、リピーター特典を顧客が望んでいることがわかったのだ。なお、現在日本でも展開されている「ワンモアコーヒー・レシート」は、午後の売上の落ち込み回避に役立った。

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