アジア現地駐在員マーケティングレポート

実は「隠れ肥満国」--シンガポール政府&企業の健康への取り組み

島田裕一(アウングローバルマーケティング)2015年02月04日 08時00分

 この連載では、アウンコンサルティングの現地駐在員による、日本・台湾・香港・タイ・シンガポールでのマーケティングに役立つ現地のホットトピックを週替わりでお届けします。今回はシンガポールから、実は隠れ肥満国である同国の傾向と企業/自治体の対策についてお伝えします。


実は隠れ肥満国・シンガポール

実は肥満大国であるシンガポール

 シンガポールが実は肥満大国だということを知っている人が、日本にどれほどいるでしょうか。高層ビルの立ち並ぶスタイリッシュな街並みに、スーツをパリっと着こなしたスリムなビジネスパーソンが闊歩している印象があると思いますが、実はシンガポールでは肥満が大きな社会問題となっています。

 そこで今回は、シンガポールの人々がどういった形で肥満を解消し、健康の維持、向上を試みているのか、お伝えできればと思います。

 まずは現状把握から。2010年の同国Ministry of Health(健康促進局)からの発表によると、シンガポールでは一般的に肥満と呼ばれるBMI値30以上を持つ人の割合が18歳から69歳の全人口の10.8%であり、2004年から2010年にかけて4%上昇しました。

 アジアの近隣諸国と比較をしてみても、2013年のThe Lancet(英国の医療雑誌)の調査によると、シンガポール人は20歳以上の国民の中でBMI30以上の割合がとても高いというデータが出ています。数値としては日本の約3倍です。

  • シンガポール:男性12%、女性11%
  • タイ:男性6.5%、女性11.2%
  • インドネシア:男性5.4%、女性8.3%
  • 日本:男性4.5%、女性3.3%

 実際に街を歩いていても、日本や他のアジア諸国と比べ、あきらかに恰幅の良い人の割合が多いように感じます。

原因は外食依存度の高さや運動不足

 肥満の原因として、まずは外食への依存度の高さが挙げられます。2010年12月1日のThe Straits Times(地元英字紙)によると、1週間に複数回外食をするシンガポール人の比率は、2004年の49%から、2010年には60%に上昇しました。

 そして、外食による塩分過多も要因の1つです。いくつかの外食メニューには塩分が多量含まれているにもかかわらず、それに気づいていない外食依存者が多いのです。たとえば一般的に、ホーカーセンター(屋台街)が提供している魚のスープは健康食だと思われていますが、ボウル1杯に含まれる塩分だけでも、1日の塩分摂取許容量の70%に当たります。

 さらに、これは悪いことではないのですが、シンガポール人の慣習として、食を粗末にしてはいけないという考え方があるため、それによる食べ過ぎが起こっているとも考えられます。

 加えて、慢性的な運動不足も原因です。2013年にAIA Singaporeがアジア・パシフィックにおいて1万200人以上の成人を対象に行った調査によると、シンガポール人は1週間の運動時間平均が144分と、同地域の平均180分よりも36分短いというデータ(PDF)が出ています。

 さらには、そもそも国として運動自体を推奨する動きが近年までなく、教育において学業優先であったことも健康意識の低さに関係し、それが運動不足につながっていると考えられます。

自覚はあり

 当のシンガポール人自身は、肥満に限らず自らの健康状態に対する懸念はあるようです。2013年のAIAの調査では、自身の健康状態への満足度を10点満点で自己評価した点数が6.6点と、アジア地域の平均7点を下回りました。さらに、4人中3人のシンガポール人が、5年前と比べて健康状態が良くないと回答しました。これは18~29歳の若年層においても同様です。

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