アジア現地駐在員マーケティングレポート

実は「隠れ肥満国」--シンガポール政府&企業の健康への取り組み - (page 2)

島田裕一(アウングローバルマーケティング)2015年02月04日 08時00分

政府、企業の動き

 そんな状況にシンガポール政府や企業は静観をしているわけではなく、近年の肥満人口の増加に対し、健康をより意識した生活スタイルの習慣付けを推奨しています。

 政府においては、2014年6月9日のThe Straits Timesによると、健康促進局より2018年までに中学校50校、専門学校3校、高等専門学校8校に保健委員を派遣の上、健康に対する教育や保健指導を行うことを発表しています。

  • サラダショップ

 企業は、逆にこの状況をビジネスチャンスと捉えています。オフィス街へのサラダショップの開店が急増していたり、グラノーラを扱うスーパーが多くオープンしています。

 また、マクドナルドやローカルのレストランチェーンであるFish & Co.が500カロリー以下のメニューのラインアップを拡充したりと、健康志向の高まりに対応した店舗が多く見られるようになってきました。

 さらに大きな動きでは、2014年3月21日にコカコーラ・シンガポールが「Movement is Happiness」という活動を始めました。これは前年の同社の世界的な肥満対策へのキャンペーンに続いたかたちで、シンガポールでも本格的に動き出したものです。

 2014年3~4月にかけて、シンガポール国内のいろいろな場所に「Movement is Happiness activity stations」というスポットを設け、シンガポール人を集客。そこではフラフープ、円盤投げ、ビーチボールなどの楽しいアクティビティを用意し、人々の生活に運動を取り入れる機会を促進しました。

 さらに同社はSpotifyと提携し、“Move Happy”というFacebookアプリを始動させました。ユーザーはこのアプリを通じて、運動中に聴くオリジナルのミュージックプレイリストを作成できます。ランニングへの障壁を低くしようという試みでした。

個人の健康志向の高まり

 個人の取り組みとしては、2010年12月1日のThe Straits Timesによると、屋台店舗に対し、より多くの野菜を取り入れてほしいという要望が増えてきていたり、上述のAIAの調査によると、シンガポール人の約50%が、甘い物やお菓子の購入を減らし、減塩のものを購入し、加工品はあまり食べないようにしたいと答えたとのことです。

 運動不足の解消についても、特にランニング熱が高まっており、気温が涼しくなる18時頃からランニングを始める人が多く、ランナー向けのコースも町中にいくつもできています。

 マラソン大会も「Sundownマラソン」「Standard chartered marathon」の2大マラソンをはじめとして、「Nikeマラソン」「Adidasマラソン」などスポーツメーカー主催のものや、夜の動物園を走る「Safari Zoo run」などの珍しいものもあり、ランナー人口が着実に増えています。


動物園を走る「Safari Zoo run」

ITで健康促進

 ITを活用した啓蒙活動も多く見られます。2011年のジェトロの記事によると、上述の健康促進局は、肥満防止、あるいは減量を目的とした食の改善を以前からウェブサイト上でアピールしています。

 たとえば外食の際は、できるだけ低カロリーのメニューを選ぶこと、飲み物はジュース類を避け、飲料水に限定すること。また内食の際にも、全粒穀物の摂取を心掛けることや、「Healthier Choice Symbol (HCS)」というロゴマークがついた脂肪分、糖分、カロリーが低い食品を摂ることなども奨励しています。

 さらに、健康促進局のウェブサイトには、カロリー摂取を意識した食生活を国民に促すために、人気ローカル食のカロリー数値が表示されるようにもなりました。

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