デジタルサイネージ市場の拡大が進む中、シャープの躍進が目立っている。同社では、JR名古屋駅の中央コンコースに、60V型のデジタルサイネージ用ディスプレイ「PN-R603」を100台導入した。10月7日から本格運用を開始したほか、10月8日にはテーブル型光タッチディスプレイ端末をゆうちょ銀行に導入。対面接客業務に活用する新たな提案にも成功している。
特に、シャープは国内デジタルサイネージ市場において、60V型以上の大型液晶ディスプレイで61.7%のシェアを獲得。圧倒的な強みをみせている。シャープのデジタルサイネージ市場への取り組みを通じて、同市場の動きを追った。
デジタルサイネージ市場は、ここ数年拡大の一途をたどっている。
ディスプレイサーチの調べによると、全世界のパブリックディスプレイ市場は、2011年度には250万台を突破していたものが、2012年には大きく減少。しかし、そこから反転し、2014年には再び、250万台を突破。2015年度は300万台を突破し、大きく成長するものと予測されている。
この数値を見るには、3つの要素に気をつけておく必要がある。
1つは、2012年に見られた大幅な市場縮小の要因が、業界側からみれば、外的要素ではなく、むしろ内的要素を理由としていた点だ。具体的には、ディスプレイ市場において、PDPからの撤退が相次ぎ、それを液晶がカバーするという構図にはなっていなかったことがあげられる。
「デジタルサイネージ市場はまだまだ提案型の市場。PDP陣営が撤退した際に、液晶に置き換えるという提案が見られず、PDPが減った分だけ市場が縮小した。プレイヤーの数が減った分だけ、市場が縮小した」と、シャープ ビジネスソリューション事業推進本部の寺川雅嗣本部長は、2012年の市場縮小の理由を分析する。
2つ目の要素は、2015年度には300万台を突破するとの予測に対して、実際には、さらに大きなデジタルサイネージ需要があると見られる点である。
「小売店舗では、積極的にデジタルサイネージを活用する動きが出ているが、ここでは一般的な家庭用テレビを利用するといったケースも多い。実際には、この3倍規模のものが利用されているのではないだろうか」と、寺川本部長は予測する。全世界で年間1000万台規模のデジタルサイネージ需要があるという見方もできそうだ。
そして、3つ目の要素は、2014年と2015年の大幅な成長においては、60型以上の大型ディスプレイの構成比が高まっているという点だ。
「広告業界が、媒体としての効果を認知し、中でも大画面ディスプレイを活用しはじめたこと、これまでPCの画面やプロジェクタで表示していた各種情報を、大画面のマルチディスプレイに置き換えるといった動きも出ている。大型化の流れが急加速しており、今後もこの勢いは続きそうだ」(寺川本部長)。
とはいえ、現在のデジタルサイネージの市場規模は、コンシューマ向けテレビ市場の約100分の1。金額ベースでも50分の1程度の市場規模だろう。
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