しかし、シャープの寺川本部長は、今後の成長に向けては、楽観的見通しを示す。
「まだまだ市場は小さいのは事実。だが、見方を変えれば、いま存在する看板のすべてが、デジタルサイネージの潜在需要ということもできる。課題は業界全体の提案力が弱いという点。これを強めることでさらに需要は拡大するだろう」とする。
デジタルサイネージ陣営の提案力の強化に向けては、いくつかの観点があるだろう。
ひとつは広告業界からの働きかけだ。富士キメラ総研の調べによると、2012年の国内デジタルサイネージ市場は214億円であったが、これが2020年には7.5倍の1600億円に拡大すると予測している。広告業界がこの分野に注目しはじめているのは明らかだ。ここでデジタルサイネージによる広告メリットをどれだけ訴求することができるかが鍵だ。
2つ目はデジタルサイネージに対する設置側の認識が変化したこと。これがデジタルサイネージの導入を加速しはじめていることだ。
最大の理由は、これまでのポスター型の広告掲示に比べて、デジタルサイネージ化することで、広告収入が増加したことだ。中には、2倍以上の広告収入を獲得できるという例もでている。
例えば、広告用のデジタルサイネージを設置したある企業の場合、従来のポスタータイプの場合には、1週間の掲示費用が7万円。これが10枚掲示できることで売上高が70万円だったのに対して、デジタルサイネージの場合には、時間による切り替え提案へと変更。1社あたりの金額は1週間40万円と減少したが、これまで1社だけだった広告クライアントが、4社同時に獲得できるようになり、収入は160万円へと2倍以上に増加したという。
こうした広告収入の増加に対するメリットを感じ始めている企業が、デジタルサイネージの導入を積極化しているという。業界としては、このメリットをいかに訴求できるかが今後の鍵だといえるだろう。
また、オフィスや小売店店舗などにおいても、デジタルサイネージの導入機運が高まっており、これまで社内で使用していたプロジェクタの代わりにデジタルサイネージを利用したり、店舗での集客用のディスプレイとして導入するといった動きが見られている。
ここでもデジタルサイネージによるメリットをいかに訴求できるかが鍵だ。
オフィスにおいては、従来のプロジェクター利用ではカーテンを締めて、照明を消して、パワーポイントを表示するという手間が必要だったが、デジタルサイネージではそれが不要だ。また、PCとの連携によって、直接書き込める電子黒板としての利用も可能だ。一方で、小売店舗ではPCやUSBから簡単に情報を表示し、さらにインタラクティブな情報配信も可能になり、訴求効果が大きくなるといった効果も期待できる。こうした効果を提案していく必要があるだろう。
今後は、システムインテグレーターなどによる医療分野や教育分野、流通分野といった業種ごとの提案強化にも注目が集まりそうだ。
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