流通企業がO2Oに踏み切る背景としては、チラシや広告、CMなど、従来の顧客接点の効きが悪くなっていると感じている中で、ウェブのアクセスログを解析すると、スマートフォンが急速に増えているという端的な理由が浮かび上がる。
「加えて、これまでメインの顧客層がシニアであるから、スマートフォン対策は時期尚早と見ていた大手チェーンなども、将来顧客の取り込みが急務になってきたことと、スマートフォンがミドルはもちろんシニア層まで普及し始めたことで、そろそろ本腰を入れ始めています。それがここ1年くらいの大きな変化だと思います」(小田氏)。
また、量販店などの流通企業だけでなく、お店を持たないネット通販会社などもショールーミング(showrooming)というO2Oの1つの大きな機能を軸に、O2O市場に参入してきている。ショールーミングは、小売店で確認した商品をその場では買わず、ネット通販によって店頭より安い価格で購入する顧客行動を指す。
「たとえば大手量販店の売場で、あたかもそこがショールームであるかのように商品を確認して、アマゾンなどのネット通販で購入するというケースは増えてきています。そのため、ネット通販専門業態もO2Oとは無縁ではなく、今や異業種格闘技のような様相を呈しているのです」(小田氏)。
そうした側面からも、今や、マスコミはO2O以上にオムニチャネルという言葉を多用し始めてきた。これは端的に言えば、店頭購買とEC購買がシームレスになっていくという概念だ。顧客の生涯価値を考えた場合も、企業は、ECは他社に取られるのではなく自社のサービスの中で、店頭、あるいはECを選んでもらうようにしたいと考えるものだ。たとえばスーパーに買い物に来て、多くのものは店頭で購入するのだが、飲料水など重いものは店頭でEC購入できれば便利だ。
企業のニーズは、それぞれのお客様に、より多くのモノを買ってもらいたいということに尽きる。そのためには、少しでも顧客接点を増やし、さらに各接点でのコンバージョン率を高めるための施策を欲している。O2Oやオムニチャネルの考え方は、まさに、その要求に応えるものだと言えそうだ。
「流通企業では、たとえばパルコなどが有名ですが、ショールーミングを展開する企業が出始めています。これからはそうしないと、飲料水はネット通販専門業態で購入されてしまう、という店頭での機会ロスが起こる可能性が高いわけです」(小田氏)。
コンバージョン率を高める、あるいはそもそも来店頻度を高めるための工夫とはどのようものであろうか。次回は具体的な事例も交えてお聞きする。
(執筆:カケザン Chif planner/CEO 磯 雅範)
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