この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、広告・マーケティング分野における“スマートフォンの今”をお伝えする。前回は「O2O」に関する基本的な考え方などについて説明したが、ここではより具体的に、O2O戦略を成功させるためのポイントを紹介しよう。
D2Cでは、実店舗を持つ流通小売業から製造業まで、幅広くO2Oに関する相談を受けている。しかし、当初から「O2O案件」として相談されるケースは少なく、打ち合わせを重ねて目的を掘り下げていく中で、結果としてO2Oに関連する案件であることが多い。
たとえば、以下のような案件がある。
デジタルマーケティングは、旧来の手法を否定して成り立つものではない。たとえば、チラシやポイントカード、ポスターなどとの相乗効果を図ったり、マーケティング手法全体を見直すことで旧来の手法の効果や効率を高め、その上で、徐々にデジタルに代替、あるいは統合していく。つまり、生活者の購買行動の変化に合わせた仕組みとしてのソリューションの導入や、マス・デジタル・店頭・購買後も含めたコミュニケーションをデザインすることが求められるのだ。
それは、ゼロから新しいソリューションを開発し、導入するのと比べて、さまざまな調整や気配りが必要になり、決して平坦な道ではない。プランニングの過程では、ターゲットはもちろん、オンラインとオフラインのバランスなども考慮しながらユーザーの導線を設計していく。課題も多いため、ロードマップを引いて一段階ずつ着実に進めていく必要がある。「1回の送客重視」なのか「顧客化」なのかなど、ゴールのイメージを明確にして共有しておくことが重要だ。
O2Oをはじめ、デジタルマーケティングを推進する場合、営業や既存のマーケティング部署、宣伝部などの担当者に施策の有効性がなかなか理解されず、調整が難航することも少なくない。そこは、ゴールイメージとそこに至るロードマップを示し説得することで、少しずつ理解を得るしかない。段階を区切ったテストマーケティングを実施し、その成果をもって次のステップに進むための説得材料とするのが得策だ。O2Oに関するロードマップは以下のとおり。
キャンペーンを実施する際には、目的を明確にしてキャンペーンを成功させるとともに、そのキャンペーン自体を次のステップに進むためのテストマーケティングとして位置付けることもある。そのためには、どのようなデータが必要なのか。そうした評価指標をしっかりと事前に決める必要がある。
データとは、数字である場合もあれば、ユーザーのアナログな評価(フリーアンサーなど)という場合もある。必要なデータがどのような仕立てにすると得やすいのか、ユーザーに分かりやすいのかということもしっかりと練り込む必要がある。
たとえばユーザーの満足度を測る場合も、5段階評価で4以上ならば良い評価と判断するのか、5のみの回答だけを集計するのかといった違いだけでも、結果を評価する観点は大きく変わる。4以上を集計して60%だったとしても、5が全体の20%しかいなかった場合、果たして過半数が満足したといえるのか。また、過半数が満足する程度でいいのか。そうしたことも事後に悩むのではなく、事前に決めておかなければならない。
そうやって練り込んだ結果であれば、さまざまな関係部署の担当者を等しく満足させられるはずだ。いかなるデータが人や組織を動かすのか、そのことをマーケターは常に考えなくてはならない。
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