6月11日、アプリに特化した専門展示会「アプリジャパン 2014」が開幕した。新設されたイベントで、6月13日まで幕張メッセにてInterop Tokyo 2014と同時開催されている。
基調講演では、ヤフー 執行役員 CMOの村上臣氏が「Yahoo! JAPANのスマデバ戦略について」と題して語った。ヤフーでは2012年4月に新体制となり、“第2の創業”としてスタート。その際に掲げた“爆速”のキーワードがスマートデバイス向けのサービス開発にどのような影響があったのかなどを説明した。
村上氏はまず、市場環境の変化とそのスピードの速さを強調、「敵は世界規模になっていく。やり方が変わっていく。とにかく早くやる」と説明する。会社にとって重要な施策を検討する場合は、チームを複数作って競争させる方法があるとした。
これは1を2~3倍にするような「改善」ではリスクが大きいが、1を10にするような「イノベーション」には通用する手法だとし、「1つのチームがホームランを出すと残りの失敗も回収できる」とメリットを挙げた。
実際にサービス開発で行っている方法としては「リーン・スタートアップ」を挙げた。失敗から学んで高速に回転していく仕組みで「あいまいなものを確かなものに変えていくための方法論」という。
さらに「ベストな選択をするのは無理で、ベターな選択をいかに打率高くし続けるかがこれからの経営」とし、その理由として「検討に検討に重ねたベストでも、今日のベストが1カ月後は市場環境が変わりベストではない」「検討を短くしてベターを細かく積み重ねたほうが打率が上がる」を挙げた。
具体的な事例として行動記録アプリの「僕の来た道(iOS版/Android版)」を示した。最初はGPSで正確な位置を記録していたが、バッテリの持ちが問題となり、それ改善していくというループが起きていた。しかし、改善が思うようにいかず、途中で本来のユーザー体験を再検討。おおまかな位置情報にすればもともとのアイデアが実現できるのではないかと仮説を立て、「マニアのための高性能ロガー」から「ライフログ自動化ツール」に変更したところ、好評なアプリに変わっていったという。
しかし、村上氏は「今の時点で正しいけれど、将来はわからない」と指摘する。アプリは時間とともに飽きられるからだ。重要なのは瞬間値ではなく積分値であるとし、リリース後もどれだけアップデートできるかが重要と説く。「少なくともリリース後の1カ月後までアップデートをし、最後のふんばりでアプリのクオリティがぐんと上がる」と述べた。
そして、その後もレビューを見るなどしてユーザーからの声を検証し、「今がベストか?」を問いかけることが必要だと語り、その後もアップデートのループを早く回していくことが積分値に現れ、「サービスのバリューが積分の面積に現れる」とした。
このループを回していくためには、最初にサービスを作ったチームを運用で保持し続けるのがよいという。以前はヤフーの中でも職種ごとに組織が分かれていたが、今はサービス単位でチームを作り、チームのマネージャーが管理する方法に変更されたと説明した。
新規サービスの承認プロセスも従来の8から2へと4分の1へ削減、チームの席も近くコミュニケーションも早くなれば作業も早くなる。それが“爆速”だと全社に刷り込まれている。この理想型は爆速が早すぎて見えないことで、お客様にとっていいもの提供し続けることだとした。
同様の爆速の事例として節電アプリの「スマホ最適化ツール」を紹介した。仮説を元に開発を進め、今もアップデートをしている。また、カレンダーアプリの「ぺたっとカレンダー」や、今回のアプリジャパンのブースでも展示している「Smart Serch」についても紹介した。
講演の最後に、村上氏はイー・アクセスの子会社化中止についてもコメント。「スマートフォンでできることは多いので、インターネットの会社としてできるだけ多くの方にスマートフォンを持っていただいて、体感してほしい。それをやる上で通信事業に直接参入してやりたい、という気持ちがあった。今回は業務提携でやるが、機会があれば自らが通信事業者になってやりたいという気持ちがある」とした。
また、ソフトバンクグループ総力をあげて取り組むこととして「電話だけ、端末だけ、アプリだけでなくて、全体を通して、お客様にどういう体験をしていただくか、なんの役に立つか。これを突き詰めていきたい」と説明。近日中にサービスが提供される「Y!mobile」については具体的な話はしなかったものの「志をもってやっていきたい」と意気込みを語り講演を終えた。
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