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小売企業のオムニチャネル化を阻む「3つの課題」

菅原太郎(D2C)2013年11月28日 09時00分
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 この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、広告・マーケティング分野における“スマートフォンの今”をお伝えする。

オムニチャネル化を阻む、見えない壁がある

 ネットとリアルを問わず、あらゆる顧客接点を連携させて販売拡大を狙う「オムニチャネル」や、ネット上から店舗への来店を促す「O2O(Online to Offline)」を推進し、実店舗とECサイトの連携を強化していくと、さまざまな課題があることが分かってくる。新しいネットサービスを活用して店舗オペレーションをスムーズに導入できるか、実店舗とECサイト情報、ポイントを共通化できるか、購買データを連携できるかなども重要なポイントであるが、より根本的な課題が大きく分けて3つある。

 まず、実店舗で顧客に商品を紹介したけれど、購入経路はECサイトだったという場合に販売員が正しく人事評価されるための仕組みづくりである。通常、実店舗で商品を販売すれば、その人の、あるいはその店舗の成績として評価される。ところが実店舗で商品を紹介したところ、商品を買おうかどうか迷っている、買いたいけれど急いでいて時間がないという顧客にECサイトを案内したとする。その結果、ECサイトで商品が購買されれば、売上につながり顧客満足度の向上にもつながる。

 実店舗とECサイトそれぞれの機能を活かして、顧客ニーズに応じたサービスを提供すべきである。しかし、販売経路がECサイトだった場合に正しく人事評価される仕組みはまだまだ整っていない。このため、実店舗としては、自社ECまたはオンラインショッピングモールなどと連携できていないことが少なくない。この点への対応として、販売員が商品の品番と販売員番号をセットで記載したメモを顧客に渡して、後日ECサイトにて商品の品番をもとに商品を検索して購入してもらうことで、販売員を評価することなどが考えられる。

 次に、実店舗の出店先の商業施設などにも、実店舗とECサイトの相互連携のメリットを伝えることである。路面店は、販売チャネルがECサイトでも、自社の売上につながるので問題ない。しかし、アウトレット、ショッピングセンター、百貨店などに出店している店舗は、販売チャネルがECサイトになってしまうと、商業施設全体への売上げにつながりにくいため、Win-Winの仕組みを構築することが難しい。またファッションビル、駅ビルなどは自社ECを構築していることもあり、ECサイトを紹介する場合、自社ECまたは出店先ECどちらを紹介するか、難しいところである。

 この点に対処するために、実店舗とECサイトの両方で購入する顧客の年間購入金額は、実店舗だけ利用する顧客よりも多いことなど、メリットを具体的に説明していく必要がある。これらの課題は、広告代理業を主たる業務とする代理店、エージェンシーとしては、業務外と思われるかもしれないが、さまざまな案件を担当していく中で見えてきた課題である。

集客を目的とした値下げからの脱却

 最後に、実店舗においてスマートフォンを最大限活用するために、購買プロセスにおけるスマートフォンの利用を習慣化することである。O2O、オムニチャネルに関連するトレンドワードが広まっているが、店舗で実物を触りながらスマートフォンで口コミ情報などを確認し、店舗ではなくECサイトで購入する「ショールーミング」は、型番商品の代表格である家電を取り扱う家電量販店が中心となっており、総合スーパーやコンビニ、アパレルなどへの影響はまだまだ限定的である。

 一方、ファミリーレストラン、ファーストフード、居酒屋などの外食は、実店舗でクーポンを提示して割引きを受けることが習慣化されつつあるが、クーポン、決済以外で売場でスマートフォンを利用するシーン、シチュエーションはまだまだ少ないものと思われる。

 O2Oはネット上で行われる販売促進、マーケティングなどの活動として、クーポンによる店舗送客と考えられることが少なくないが、それだけではオムニチャネルの構築はできない。また、最近になって、クーポン発行に積極的なチェーン店などにおいても「できればクーポンは止めたい、だけど止められない」といった意見が少なくない。そうした金銭的なインセンティブはエスカレートしていくものだからである。10円安いことに慣れると、今度は10円安が通常の価格となってしまう。元に戻すと、それは値上げと同じなのだ。だから、止めるに止められなくなる。値下げが常態化することで、いつしか企業は疲弊していく。

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