小売企業のオムニチャネル化を阻む「3つの課題」 - (page 2)

菅原太郎(D2C)2013年11月28日 09時00分

 いま、オムニチャネル化を背景とした来店策として、インセンティブ以上に重要なのは、売場や店舗の価値を上げることにほかならない。昔ながらの接客やサービス、飽きない売場づくりをベースに、いかにスマートフォンなどのモバイルを使った“体験”を来店客に提供し、その来店客をロイヤルカスタマー化していくかということがあらためて大切なのだと感じている。

さまざまな体験の提供、カスタマー・ジャーニーを描く

 たとえばファミリー層に向けて、子どもを飽きさせない「おもてなし」の方法を模索する。その中にはスマートフォンを活用した、その場で楽しめるゲーム的な楽しみもあるだろう。キャンペーン事例であるが、良品計画が実施した手作りお菓子の家キット「へクセンハウス」のプロモーション「MUJI HOME MADE」(第12回モバイル広告大賞 グッドブランディング受賞)」では、旗艦店舗に「へクセンハウス」のジオラマを設置して写真撮影を促し、来店客のソーシャルメディアへの投稿が自然とバズ効果を生み出した。このように、さまざまな仕掛けが考えられる。


良品計画が実施した手作りお菓子の家キット「へクセンハウス」のプロモーション「MUJI HOME MADE」

 また、大型店舗であれば、販売員が接客中で順番を待つことなく、最適な商品情報や売場情報をスマートフォンによってその場で簡単に確認できれば、来店客にとっても便利だろう。そこで、その人のECおよび店頭での購入履歴などをもとにレコメンドなどパーソナライズされた情報を提供できれば、ロイヤルカスタマー化にもつながるはずである。そのためには、マーケティング・プラットフォームとなる会員証代わりのアプリの開発、発行も効果的である。

 そして、そのアプリがデジタルの世界とリアル店舗をつなげる。企業・ブランドと顧客を結ぶプラットフォームとして機能し、さまざまな情報、体験を顧客に提供できれば、ECとリアル店舗を行き来してくれるようになる。まさに、顧客の生涯価値を上げることができるはずだ。

 そうした考えに基づいて、顧客ごとのペルソナ(外的側面)を把握し、ターゲットを深堀りして、その顧客の体験をオムニ(すべての)チャネルの中で追いかけ、接触する。かつて「真実の瞬間」と呼ばれた静的な接触機会ではなく、まさにカスタマー・ジャーニーを一緒に巡ることが必要とされる時代が到来している。

 次回からは、サービスとユーザーとのさまざまなコンタクトポイント(顧客接点)を明確にし、サービスプロセスを構築していく“カスタマージャーニーマップ”について具体的に解説していきたいと思う。

(執筆:D2C 営業本部 ソリューション部 マーケティングプランナー 菅原太郎)

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