そこで、ウェブの特徴を生かして、シズル感を表す音声付きの動画を配信する。さらに、食材のこだわりなどをアナウンスやテロップで訴求し、おいしさを伝える。スマートフォンの特性を生かすのであれば、店舗の近く、たとえば半径150メートルに入った時に、そうしたプッシュ広告を配信するアプリを開発し、事前に提供するのもいいだろう。そのように商品理解を促進したうえで、クーポンを配信するなどして、ユーザーの行動を喚起するのだ。
「ジオフェンス」をご存じだろうか。これは、仮想的な地理的境界線を設定できる機能のことだ。この機能は以前からスマートフォンに搭載されていたが、実際にこれを活用したアプリが登場したのは最近のことである。この機能を使って、ユーザーは当該店舗の近くを通った際にクーポンを受け取るなど、意識することなく有益な情報を得られる。逆に言えば、意識していないユーザーに、クーポン情報などを提供して、来店を促進できるということだ。
最近ではさまざまな趣向をこらしたクーポンも登場している。たとえば湿度や気温など天候に応じて割引率が変わるクーポンがある。簡単にいえば、不快指数が高いと割引率が上がるといった施策だ。雨で来店が鈍る日にクーポンの割引率を高くすることで、来店を促進するわけだ。
クーポンにエンターテインメントの要素を入れて楽しんで参加してもらうといった、コミュニケーション軸を強化することも重要だ。たとえば、GUのアプリ(iOS/Android)では、AR技術を使った「宝探しクーポン」や「モンスタークーポン」(GUのロゴにアプリのカメラをかざすと宝箱やコウモリが飛び出す)、加速度センサーを使った「シェイククーポン」(スマートフォンをシェイクするとクーポンが当たる)など、さまざまな演出をこらしてユーザーを引きつけている。
いずれにしても、ただクーポンを配布するのではなく、商品認知を深めて興味を喚起し、購買に結びつけるプロセスを重視することが大切だ。デジタルマーケティングも、ユーザーや顧客の体験価値を高めるために何を提供するかが最も重要なポイントとなる。
O2Oは、オンラインからオフライン、あるいはその逆でもあるが、送客だけが目的ではない。1回の送客のための施策ではなく、その来店をきっかけにいかにその店舗やブランドのファンになってもらうか。そして、リピーターから顧客化を促進し、顧客の生涯価値を高めるための囲い込みをする。そうしたマーケティング戦略を、オンライン、オフラインを一気通貫してデザインすることが何よりも重要になるのだ。
そのためにも、データマネジメントという観点から数字と向き合い、さらにコミュニケーションデザインという観点から便利、安い、役立つなどの機能的価値と、楽しい、嬉しい、おもしろいなど情緒的価値を両軸で考えたプランニング&プロデュースをする。この2つがO2O戦略を推進するうえで必要不可欠となる。
次回は、どのようにデータを取得し活用していくか、データマネジメントについて考えていきたい。
(執筆:D2C 営業本部 ソリューション部 チーフプロデューサー 松岡俊輔)
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