「モバイルファーストからモバイルベストへ」--Facebookが見る5つのトレンド

岩本有平 (編集部)2013年07月24日 20時47分

 日経BP社主催のイベント「モバイル&ソーシャルWEEK 2013」が7月23日から25日にかけて開催中だ。2日目の基調講演にはFacebook アジアパシフィック担当副社長のダン・ニアリー氏が登壇。Facebookにおける5つのトレンドについて語った。

 ニアリー氏によると、Facebookのネットワーク(利用者数)はすでに11億人になっていると説明。うち日本での月間アクティブユーザーは2000万人とした。また、インターネットの利用時間のうち、5分に1分はFacebookを利用している状況だという。モバイルの月間アクティブユーザーは7億5000人。「スマートフォンで最も利用されているSNS。滞在時間が最も長いという調査結果がある」(ニアリー氏)。そんなFacebookにおける5つのトレンドをニアリー氏は説明する。

 1つめは「Mobile」だ。ニアリー氏は、人々の情報収集手段がテレビや新聞からモバイルインターネットに変化してきたと指摘し、「モバイルが人生の一部になってきた」と語る。2011年にはモバイルデバイスがデスクトップPCの出荷台数を越えたという調査結果を紹介し、「これは(一時的な)トレンドではなく、成長傾向のほんの一時点に過ぎない」(ニアリー氏)とした。

 Facebookではこれまで、デスクトップ向けの製品を開発し、それをモバイル向きに展開してきたという。だが、2011年に開発の方向性を変更。「モバイルスペシャリストを作るのでなく、1人1人のエンジニアがモバイルの開発をできるようにする」という考えのもと、モバイル中心での製品開発体制をとるようになったという。

 ニアリー氏はまた、モバイル戦略がユーザーだけでなく、Facebookを広告媒体として利用する企業にとっても価値があるものだと説明する。詳細は語られなかったが、Facebook上のつながりやそこでの会話をモバイル向けの広告と連携しており、「モバイルファーストからモバイルベストな環境に移ってきている」(ニアリー氏)とした。

 2つめのトレンドは「Identify」だ。ニアリー氏はかつて、「ハンドルネーム」でインターネット上のコミュニケーションが成り立っていたと説明。「相手が現実に存在する、自分が自分である」というauthenticity(信頼性)が重要になり、その結果コミュニケーションがリアルなものになるという。

 これは、マーケティングの観点から見ても、「今までより親密かつ、1対1の関係性を持つことができるようになる」(ニアリー氏)という。

 3つめは「Innovation」だ。ニアリー氏は、「ある男性がバーに入って席に座ると、なじみのバーテンダーがその人の名前を言ってあいさつし、好きな音楽をかけ、好みのスナックを出す」という、“パーソナライズ”された環境の例をを挙げる。そして、男性がバーに初めて入った時、バーテンダーが男性を知らなくても、同じような対応を受けられるという可能性を語る。「ビッグデータ、情報がこれを可能にしてくれる。イノベーションは『モノを作る』というだけではない。どうやってその情報を使って人々の生活に入るか、ターゲティングするかということ。Facebookの基礎はまさにここだ」(ニアリー氏)

 4つめは「Measurement」だ。ニアリー氏は、先ほどと同じく男性がバーに来たという例を挙げ「その男性がサッポロビールやキリンビールのネオンを見たからといって、注文するという判断の材料になったかは分からない。購入の直前に目の前にあったからといって判断材料になるとは限らない」と説明。アクションに対する因果関係の測定について考える際は、購買活動全体を計測すべきだとした。

 Facebookでは、提携する広告トラッキングサービスや、オフラインの行動データを保有する企業とともに購買行動を分析し、オフラインでの購買につなげていく取り組みをしているという。

 最後に挙がったキーワードは「Future is Digital and Analog」。ニアリー氏は、オーストラリアで人気の食品メーカーGriffin'sの例を挙げる。同社が菓子の新しいフレーバーを何にするかFacebookを通じてユーザーとコミュニケーションしたところ、「(販売終了した)昔の製品を復活して欲しい」という声が出たのだという。そしてその声に応じる形で再販売したところ、今までで1番のヒットとなったという。「オフラインの会社がオンラインのコミュニティを使って新製品の開発に至った」(ニアリー氏)。

 これら5つの傾向を語ったニアリー氏。最後にFacebookの社内などに掲げられている「This Journey 1% finished(この旅は1%しか終わっていない)」という言葉を紹介した。「我々は11億人のネットワークを作ることができたが、これに満足することなくいる。次の10億人のネットワークを(どう作るか)考えている」(ニアリー氏)

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