欧州宇宙機関(ESA)のHerschel宇宙望遠鏡は、4年近くにわたって素晴らしい宇宙の画像を撮影してきたが、あとわずかで液体ヘリウムの冷却材が尽きようとしている。ESAは、同宇宙望遠鏡の電源を落とす時点で、2万2000時間以上の科学観測を行ったことになるとしている。マドリードにあるESAの欧州宇宙天文学センターで、Herschel宇宙望遠鏡の科学運用およびミッションマネージャーを務めるLeo Metcalfe氏によれば、この科学観測時間は当初の計画よりも10%長いという。
人類が行った宇宙観測の中で最も成功したものの1つである同宇宙望遠鏡の運用終了を記念して、地球に送られてきた目を見張るような画像の一部を振り返ってみるのは価値のあることだ。
この写真には、「W3」という名で知られる巨大な星形成領域が見える。W3は広大な星のゆりかごを含んだ巨大な分子雲で、銀河系の主要な渦状腕の1つであるペルセウス腕の中にあり、地球からは約6200光年離れている。Herschel宇宙望遠鏡は、巨大な恒星がどのように生まれるのかを知るために、W3に焦点を当てた。
直径200光年にもなるW3は、銀河系外部領域で最大の星形成構造の1つで、低質量恒星と大質量恒星の両方の形成が行われている。その2種類の違いは、太陽質量の8倍より重いかどうかだ。それよりも重ければ、恒星は一生の最後に超新星となる。
この画像の左上にある、高温のちりが密集した明るい青色の部分では、大規模な星形成が行われている。この2領域は、「W3 Main」および「W3(OH)」と呼ばれる、進化の中で最も若い領域だ。この生まれたばかりの恒星から噴き出す強力な放射は、周囲のちりやガスを加熱して、Herschel宇宙望遠鏡の赤外線画像の中でそれらを明るく光らせている。
提供:HOBYS Key Programme (F. Motte)、トロント大学、A. Rivera-Ingraham & P.G. Martin、ESA/PACS & SPIRE consortia