前回は、以下2つの点をお話しました。
今回は、インサイト探索でやはり重要なポイント「同じカテゴリーの商品だけを競合と見るのではなく、“生活者視点”での競合を想定すること」についてご説明したいと思います。
マーケティングという観点である商品・サービスを考える時、どうしても「同じカテゴリー内のランキング」ばかり気にして、「自社商品は、同じ業界の他社商品と比べてどうか」という視点になりがちです。特にその商品担当となってマーケティングプランを立案し、予算達成までのプレッシャーを感じながらプロジェクトを遂行するマーケターであれば、まずはもっとも視界に入る競争相手である「カテゴリー内の競合商品」に注意が集まってしまうのも無理はありません。
しかし生活者は、「そのカテゴリー内でもっとも優れた商品」だとしても、必ず買ってくれるとは限らないのです。
ここでは、以前私が担当した「画期的によく眠れるようになる“枕”」である「新商品A」のお話しをします。
「新商品A」は、次のような商品です。
しかし、結果、売上は思ったほど順調ではありませんでした。
担当者からの最初の発言は「競合よりも圧倒的に素晴らしいと認識され、買いたいというアンケート結果が出ているのに、なぜ売れないのか不思議でならない」というものでした。これは残念ながら、「マーケティングを仕掛ける企業側のロジックでしかない」と言わざるを得ないと私は思います。
この担当者からすれば、自分のしていることは「枕を売る」ということですが、生活者からみれば「自分の眠りを改善する」ということが価値であり、それを満たす選択肢としては「枕」以外のさまざまなものがあります。
例えば、「医薬品」「サプリメント」「アロマ」といったお金を払って手に入れる「商品」はもちろん、「入浴法」「ストレッチ・ヨガ」「早起き法」といった、お金を出す必要のない「非商品」もあります。実際、生活者が自身の本当に欲しい「自分の眠りを改善する」という選択肢は山のように存在し、この「業界外・カテゴリー外の競争相手」に打ち勝っていかないと、最終的に自社商品の購入には至らないのです。
これは、実は気付いている人は昔から大事にしている「鉄則」でもあります。何年も前にコンビニの“おにぎり”が台頭しはじめた頃、あるインスタント食品のトップ企業の会長が「当社の競争相手は、業界の競合ブランドではなく、コンビニの“おにぎり”だ。同じ100円でどっちを買うのかの“小腹満たし競争”にどうやって打ち勝つかが、当社のマーケティングの本質課題だ」と言われていたのを思い出します。
私も仕事の合間に、ちょくちょくコンビニで間食するものを物色していますが、まずどのカップめんにするかを考える前に、そもそも何にするか(ex:おにぎりか? カップめんか?)」を決定するのに一生懸命です。この時の自分の行動を振り返っても、確かにこの会長のおっしゃることは、真実なのだと思います。
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