(編集部注:米CNETによる「iPhone 5」のレビューを前編と後編の2回に分けて翻訳して公開します。前編は9月28日に公開されています)
iPhoneのあらを探そうとしている人は、ここで居住まいを正し、注意深く読み進めてほしい。「iPhone 5」は今まで以上に優れた携帯電話になるべく工夫を凝らしている。そして、その努力は実を結んでいる。
AppleはiPhoneの発表時に「ワイドバンドオーディオ」テクノロジについて語っていたものの、このテクノロジは通信キャリア側のサポートも必要であるうえ、iPhone 5を取り扱う米国のキャリアで対応を表明しているところは今のところ1社もない。しかし最も重要な音質改善は3つ目のマイクを用いたものだろう。これは通話音声の品質改善、特にスピーカーフォン使用時における品質改善を目指し、ノイズキャンセル性能を向上させるためのものだ。テストしてみたところ、確かに音質が向上していた。また、スピーカーフォンを使って電話をかけてみたところ、通話相手からは「iPhone 4S」よりもiPhone 5の方がより歯切れ良く、明瞭に聞こえるという感想が得られた。なお、以下の音声サンプルはiPhone 5を耳に当てて通話した際のものである。
AT&TのiPhone 5での音声サンプルを試聴し、その品質を確かめてみてほしい。
筆者がニューヨーク界隈で繰り返しテストしてみたところ、通話が途切れることもなく、電話した相手の感想から判断すると、その通話品質は優れたマイク技術のおかげで全般的に改善されているようである。
Appleは3年前にARMベースの独自プロセッサ路線を採用して以来、毎年新たなプロセッサを発表するとともに、その最新プロセッサを以降のiPhoneのバージョンアップで搭載している。つまり「iPhone 4」には「A4」プロセッサが、そして「iPhone 4S」にはデュアルコアの「A5」プロセッサが搭載されている。また、iPhone 5には他のデバイスに搭載されたことのない最新の「A6」プロセッサが搭載され、そのRAM容量はiPhone 4Sの512Mバイトから1Gバイトに倍増している。
2011年までは、新たなプロセッサを「iPad」に搭載し、同じプロセッサを同年中に発表するiPhoneに搭載していた。ここで言うiPadとは、初代iPadと「iPad 2」のことである。しかし、2012年にリリースされた第3世代のiPadにはA6プロセッサではなく、単一のSoC上にデュアルコアのCPUとクアッドコアのGPUを集積した「A5X」プロセッサが搭載されることになった。
A6プロセッサはiPhone 5向けに特化してデザインされたものであり、詳しいことはよく分かっていない。このプロセッサは、iPhone 4に搭載されているA5プロセッサよりも最大で2倍高速に動作し、より小さく、より省電力となるように作られているということまでは分かっている。なお、「Geekbench」というiOS上でも動作する有名なベンチマークツールを使用すると、iPhone 5のA6プロセッサの性能は1.07GHzの「ARM v7」プロセッサ(これはiPhone 4Sに搭載されている800MHzのA5プロセッサよりも高速である)に1016MバイトのRAM(iPhone 4Sに搭載されているRAM容量の倍であり、「新しいiPad」に搭載されているRAM容量と等しい)を搭載した場合のそれと同等であるという結果が得られた。
しかし、これだけで全容を語ることはできない。このためiPhone 5上でのアプリの実行速度をテストするために、一連のアプリ(「iMovie」と「iPhoto」「Pages」「Numbers」「Keynote」「GarageBand」「iCards」、さらに「Maps」)を使用してみたところ、すべては極めて高速にロードされ、動作もきびきびしていた。とは言うものの、1年前にリリースされたiPhone 4Sの時から動作はきびきびしているため、事例証拠でiPhone 5を語るのは難しい。
新型iPhoneは確かに高速化されており、より高速な無線サービスである4G LTEのおかげもあって、さらに高速に感じられたのかもしれない。また、アプリの切り替えや起動もきびきびしていたものの、その差がほとんど感じられない場合もあった。さらに、一部のアプリを起動した時にはさほど大きな違いを感じなかったものの、ウェブや「iCloud」に接続するアプリのロード時間は確かに短縮され、数秒違う場合もあった。増加したRAM容量も、マルチタスク時や、複数の高機能アプリを切り替える際に大きな違いを生み出しているはずだ。
ちょっとしたテストを実行してみた結果も、非常に期待できるものであった。「SunSpider JavaScript Benchmark」テストを実行すると、iPhone 5はiPhone 4Sの2倍高速だという結果になった(1073ミリ秒対2238ミリ秒)。また「Geekbench 2」では、3回のテストにおけるスコアがiPhone 5は1461であった一方、iPhone 4Sは629であった。すなわちスコアは2.3倍となり、実行速度で言えば132%高速になったという長足の進歩を意味している。「App Store」にはないグラフィックスベンチマークツールを使用し、3Dシェーディング性能を評価した結果からも、2倍の高速化を実感できた。ゲームを用いたテストは、まだ「iOS 6」やA6プロセッサの力を引き出すゲーム自体が発表されていないため評価は難しい。また、既存のゲームはすべて、画面の上下に黒い帯が表示され、iPhone 5で縦長になった高解像度ディスプレイの性能をフルに発揮させていないという点からも評価は難しい。しかし、A5プロセッサからiPhone 5のA6プロセッサで成し遂げられた進歩は、A4プロセッサがA5プロセッサに進歩した時よりも大きなものとなっているようだ。
どれだけ問題になるのかは分からないが、iPhone 5を長時間使用していて気付いた点が1つある。使っていると、特にWi-Fiではなく4G LTEを使っていると暖かくなってくるのだ。LTE経由で「FaceTime」の通話を20分も続けていると、金属製の背面が熱いとまでは言えないものの、とても暖かくなる。また、LTE経由でMapsアプリの「Flyover」機能を使っている時も発熱するが、いずれの場合も発熱によってパフォーマンスに影響が出ているようには感じられなかった。この状況はある意味において、新しいiPadで一時的に騒がれた「発熱問題」に通じるものがある。もう少し様子を見る必要があるものの、あなたもある種の状況において発熱に気付く場合もあるはずだ。筆者はiPhone 5をケースに入れずに使っているが、ケースに入れることで放熱が妨げられるだろうか?この答えはまだ分からないものの、ケースを入手した際には試してみようと考えている。
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