Tim Cook氏がSteve Jobs氏の後を引き継ぎ、Appleを率いていく人物として安定した手腕を発揮しているということは誰しもが認めるはずだ。しかしそれと同時に、Appleをさらなる成功へと導いていくための彼独自の戦略も徐々に姿を現し始めている。
Steve Jobs氏が2011年1月にAppleの日常業務から離れて以来、Tim Cook氏は1年以上にわたってAppleを切り盛りしてきている。しかし、Cook氏が自らの思い描くAppleを実現するために手腕を振るい始めたのは、Jobs氏の早過ぎる死の後からなのだ。
Cook氏は、米国時間2月14日に開催された「Goldman Sachs Technology and Internet Conference」での基調インタビューにおいて、Jobs氏が築き上げたAppleのスピリットや成功を維持していくという決意を表明した。
「Appleは独自の文化を持つ独創的な企業である。誰も真似することなどできない。わたしはそれが徐々に色褪せていくのを許したり、指をくわえて見ているつもりなどまったくない」(Cook氏)
Appleの株主たちはかつて、Jobs氏が去った後の同社の行く末を心配していたものの、蓋を開けてみれば同社はCook氏の手腕によって新たな高みにまで引き上げられた。Appleの2012年第1四半期決算は売上高、利益ともに過去最高を記録した。また、株価も最近、過去の最高値を更新して500ドルを突破し、同社の時価総額は4500億ドルを超えるまでになっている。
Cook氏のここ数カ月の言動から、同氏がAppleという企業の本質的価値を守りながら、どのように会社を変革していくのかという戦略を伺い知ることができる。
Appleはかつて、企業レベルでの社会貢献が足りないという批判を受けていた。Jobs氏が1997年に暫定CEO(iCEO)に返り咲いた際、会社の足を引っ張っていた金銭的損失を食い止めるべく、さまざまな支出を削減した。企業としての慈善活動プログラムもその対象となっていた。
Appleはその後、ロックバンドU2のリードボーカルを務めるBono氏が発起人として名を連ねている「プロダクト(RED)」というプロジェクトにおける最大の協賛企業となったものの、企業レベルでの慈善活動方針に変化は見られなかった。ただBono氏は、Jobs氏が慈善活動に積極的ではないという批判に対して、そんなことはないと擁護している(Jobs氏本人も個人的に寄付を行っていると述べていた)。
Cook氏がCEOに就任した後、最初に取り組んだことの1つに、企業レベルでの慈善活動プログラムの再開がある。同氏は2011年9月、Appleの従業員が寄付を行った場合に同社も同額の寄付を行うというプログラムの導入を発表した。
Cook氏は従業員宛ての社内電子メールで「(米国における内国歳入法の)第501条(c)(3)項に該当する非営利団体に対して従業員が寄付を行った場合、Appleは年間1万ドルを上限として同額をその団体に寄付する」と伝えたという。
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