Appleは今後の製品や、その噂についてのコメントを一切行わないことで知られている。しかし、そういった姿勢は微妙に変化してきているのかもしれない。Jobs氏が自伝のなかで、Appleはテレビの開発を検討していたということを漏らした点について、Cook氏は「今後の製品については一切のコメントを差し控える」という言葉を繰り返すのではなく、真実と言える部分もあるかもしれないと認めたのだった。
表向きには、「Apple TV」は未だに「趣味のデバイス」だとされている。Cook氏はGoldman Sachs Technology Conferenceにおいて「Apple TVは、ユーザーの目線で見ると、同市場に存在する障壁にもかかわらず、大きな可能性を秘めたものとして映っている。直感を信じて歩み続ければ、素晴らしい製品に化けるかもしれない」と述べている。
この発言を行った際、Cook氏はAppleがテレビを発売するという噂を真っ向から否定することはなかった。
さらに驚くべきことに、Appleがウェブサイト上で告知するよりも前に、「OS X 10.8 Mountain Lion」に関する情報が、Apple関係の報道機関やブロガーの手によってTwitter上でつぶやかれたのである。
これについては後で分かったことだが、Appleが事前に何人かの記者やブロガーを、同社のマーケティング責任者であるPhil Schiller氏や製品担当幹部らとのミーティングに招き、Mountain Lionを非公式なかたちで公開するとともに、開発者向けバージョンを搭載した「MacBook Air」を貸し出していたのであった。
こういったやり方は、Jobs氏がCEOを務めていた頃のAppleのそれとは好対照である。Jobs氏の時代には、新製品はイベントの場で大々的に発表されるというやり方が好まれていたためだ。
Daring Fireballというブログを運営しているJohn Gruber氏は、Appleの非公開説明会に招待された1人である。同氏のブログによると、イベントの場で発表されなかった理由を尋ねた際のSchiller氏からの答えは、「われわれは、これまでとは違ったやり方で進めようとしている」というものだったという。
Macはここ5年の間、新たに台頭してきたiOS機器のおかげで陽の当たらない地位に甘んじてきた。iPhoneプロジェクトに開発者を回したため、「Mac OS X 10.5 Leopard」の発売を延期せざるを得なくなったという発表がなされたことを思い出してもらいたい。
MacはWorldwide Developers Conference(WWDC)でおまけのような扱いを受け、ここ数年は大きな発表もほとんどなかった。また、Mac OS Xのアップデートサイクルも12カ月を超えていた。このため、デスクトップ型のMacは販売中止になるという予想すら出てくる始末だった。
新たなプラットフォームであるiCloudも、Macや、Macで昔から使用されているファイリング構造に対する気遣いをほとんど見せていなかった。しかし、Mountain Lionの発表はそういった状況を覆し、皆を驚かせる結果となった。
Macを愛用している人たちにとって、Macというプラットフォームの重要性が明確化されたのは、心強く感じられる嬉しい出来事であったはずだ。Macがプラットフォームではなくデバイスと捉えられるようになったのは、ある意味において地位の格下げだと見なす人もいるものの、実際のところはMac復権への道が開かれたと考えてよいだろう。
またAppleは、OS X 10.8 Mountain Lionの発表によって皆を驚かせただけでなく、1年に1度のペースで新たなOSをリリースしていく姿勢を明確にもしたのである。今後、AppleはiOSの優れた機能を取り込むという方針を堅持するとともに、最も重要なこととして、Macユーザーに不便を強いてきたiCloudにおける重大な互換性の問題を解決していくことになるはずだ。
Macの未来は明るい。iOSと完全に肩を並べるには至らないだろうが、今よりも注目を浴びるようになるのは確かである。熱心なMacファンにとって、前途は希望に満ちていると言えるだろう。
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