特許訴訟が相次いで提起される昨今、ある用語が頻繁に登場するようになっている。それは「FRAND」だ。
FRAND(米国では「RAND」としても知られる)は、「Fair, Reasonable, And Non-Discriminatory(公平、合理的、かつ非差別的)」の先頭の字を組み合わせて作られた、意味のあいまいな法律用語だ。この用語は、すべてを適切に機能させるためには特定のアイデアや特許の共有が時として必要不可欠となるため、多くの場合、知的財産の公平なライセンス提供が必要になる、という主義に基づいている。これは極めてシンプルな概念ではあるが、近年、この概念がテクノロジ業界を揺さぶっている。
AppleはFRANDを好んで用いており、同社の最も有効な法廷戦術の1つになっている。サムスンは欧州でFRANDに違反した可能性があるとして批判を浴びている。Qualcommは何年も前から、この概念に違反したという非難に苦しんでいる。近年、FRANDは非常に大きな注目を集めるテクノロジ関連訴訟に影響を及ぼしており、そこにはAppleとさまざまな「Android」端末メーカーの間の訴訟も含まれる。
FRANDの使用は、特定テクノロジの標準規格を策定する団体の誕生とともに始まった。大抵において、あるテクノロジのさまざまな要素を連携させるためには、多くの企業が団結し、そのテクノロジを対象とする一連の標準に合意する必要がある。近年の無線技術に関連したいくつかの訴訟では、3G携帯電話の標準策定に使用されている、UMTSと呼ばれる合意済みのテクノロジがFRANDの対象となっている。必須特許として知られる特許を数社が保有しており、その企業は公平で合理的、かつ非差別的な方法で、その特許のライセンスをほかのすべての関係者に提供する義務を負っている。
Lowenstein Sandlerのパートナーで、同法律事務所の知的財産部門を率いるMark Kesslen氏は、「これから実装するものについて自由に話し合い、誰かが後でやってきて『引っかかったな』と言いはしないかと心配してくれる人がいなくなってしまう懸念がある」と述べた。
さまざまな企業がこうして協力し合うことは、独占のような色合いがあるかもしれないが、FRANDの原則は権力の乱用とトラスト形成の可能性の防止に深く根差している。FRANDによって、ある企業が自社の保有する特許を利用して(それらの特許が標準に含まれるほかの特許よりも重要な場合は特に)、競合他社に法外なライセンス料を請求し、不当に有利な立場に立つことは困難になっている。
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