統合の根幹には、直接競合する製品やサービスが2つの会社にある場合、どの製品あるいはサービスを維持していくかの見極めが含まれるだろう。Yahooにはトラフィックがあり、ブランドがあり、おそらくYahooのサービスの方が全般的に優位だろう。
検索は明確な決断となったはずだ。つまり、Yahooの検索エンジンを残し、そこにMicrosoftの検索トラフィックを振り向け、可能な限り迅速に合同のエンジニアリングチームをスタートさせる。ボリュームも広告主も増えることになる。注意しなければならないのは、Yahooテクノロジへの広告主の移動だろう。しかし、Microsoftには、Googleの支配力をできるだけ早くチェックするためのクリティカルマスを可能な限り多く確立するという大きなインセンティブがある。
Yahooにはもう1つ、「Yahoo Open Strategy」(YOS)という大きな資産がある。現実の歴史においても、YOSはようやく始動したところだが、そのポテンシャルについては1年前の段階で明らかになっていた。YOSによって、Yahooユーザーはオンラインでより多くのことができるようになり、またYahooの資産をソーシャルアクティビティとリンクし、インターネットのより広い枠組の中に組み入れることによって、Yahooの資産が活性化する。
Yahooは長い期間を費やして、Yahoo Open Strategyテクノロジを組み込んで自社サイトを改良してきた。これには、映画の評価といったユーザーアクティビティをブロードキャストすることができるインターフェースが含まれる。Microsoftのオンラインサイトとのマッシュアップによってさらに遅れが生じていれば、YOSが時代遅れになってしまうリスクが高まっていたはずだ。
一部の大規模な資産については、一種の融合が必要になっただろう。「Yahoo Messenger」と「Windows Live Messenger」については、MicrosoftとYahooはすでに相互運用性に関する作業を実施しており、ほとんど互換性のない2つのネットワークを1つに統合するという作業の困難さが軽減されている。
最も厄介なのは電子メールだろう。すでに、両社それぞれに2つのオプションがある。Microsoftには企業向けの「Microsoft Exchange」と「Microsoft Outlook」の組み合わせと、コンシューマー向けのHotmailがあり、Yahooには企業向けの「Zimbra」と、コンシューマー向けの「Yahoo Mail」がある。電子メールサービスは2種類でも多すぎるのに、4種類もあるのはあまりに多すぎである。しかし、電子メールは顧客の生活にとっての中核であり、それが優雅な移行となるのは難しかっただろう。
従って、両社の合併におけるこの時点までに、ユーザーが何らかの相違を目にすることはなかったと思われる。ただしMicrosoftに見る目があれば、部分的にはYahoo Open Strategyによって、Yahoo Mailの方が優れた技術的基盤を備えているという結論を出したはずであり、新規ユーザーに関してはYahoo Mailの方へ誘導していただろう。もしかすると、手動での変更を希望する人のために、移行ツールがリリースされるか、少なくとも開発が行われていたかもしれない。
MicrosoftのYahoo部門によって、ある大きなプロジェクトがかなり違う形になっていただろう。それは、ブラウザによってアクセスする、「Microsoft Office」のクラウドコンピューティングバージョンである。Microsoft Officeの既存顧客ベースとYahooのオンライン顧客ベースを合わせれば、特に、信頼性が高く、サポートされているサービスに実際に料金を支払う可能性が高いビジネスユーザーへのアピールという点で、「Google Docs」にとってより強力なライバルになっていただろう。
しかし、Yahooプロジェクトの何もかもがうまく行くわけではない。現在Bartz氏の下でYahooの資産に対して行われているのと同じ厳しい調査が、数カ月早く開始され、同情的な見方も少なかっただろう。新しい財務担当者たちは、合格レベルに達していないYahooサイトにはちゅうちょなく大なたを振るっていたはずだ。
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