そうした冷徹な計算は、経済情勢によってその冷徹さをさらに増していたものと思われる。
買収が決着するまでに、景気悪化の兆候は明らかになっていただろう。Microsoftの株主は、買収によって株式が希薄化し、手元資金が減少するのを目の当たりにする。この株主たちが、重大な問題となった可能性がある。ほかの企業を買収し、研究に資金をふんだんに注ぎ込み、そのほかの大規模な変更を追い求めるといったMicrosoftの柔軟性は著しく失われていたはずである。
Yahooの広告売り上げの減少が明らかになり、起こってしまったことをとやかく言うにわか批評家が数多く現れたに違いない。結局、企業の統合に際しては、景気変動に対して耐性のない、弱い企業を素早く手に入れてしまう方がよいということになる。MicrosoftはYahooがそのピークにあったときには買収しなかっただろうが、Microsoft本社の会計士たちは営業権減損損失費用のことを心配し始めていただろう。
景気後退と、その景気後退の中でも続いているGoogleの市場支配に脅威を感じたYahooの社員たちは、文化摩擦があろうとも、より安定性のある雇用主を迎え、またGoogleと対決するためのより優れた手段を得たことで喜んでいたかもしれない。だがレイオフという現実が、そうした安心感を大きく損ねた可能性もある。
現実においては、今回の景気後退を受けてYahooが1520人、Microsoftが最大5000人と、それぞれ大幅な人員削減を発表している。合併による余剰は避けがたいことも相まって、Microhooの場合には人員削減はもっと早期に行われていただろうし、その後も削減が続けられ、合計の人数はもっと増えていたかもしれない。
さらに悪いことに、そうした不快な出来事は、合併の成果が目に見えるようになる前に起こったであろうことから、士気の問題が深刻化していたはずだ。
従って、われわれの仮定の歴史におけるこの時点までに、数多くの暗いニュースが伝えられたことだろう。Googleは現在の位置にはいなかっただろうし、Microhoo合併のメリットは表れておらず、世界は今の現実とほぼ同じで、しかもNASDAQからはYHOOというティッカーシンボルが消えていたはずだ。しかし、合併という果実の種は植えられ、Microsoftがカードの切り方を誤らなければ、Googleはさらに手ごわい競合企業を迎えることになっていただろう。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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