内村氏は「実験的な試みなので確信があるわけではない」としつつも、「広告主が提供するポイントを利用したタイアップ広告の応用型」と話す。無料のゲームを提供してユーザーを集め、広告費のみでサービスを運営しているサービスとしては、ディー・エヌ・エーの「モバゲータウン」があり、このモデルを意識しているようだ。
今後の展開については「今回の試みの結果に左右される」(内村氏)としつつも、2作目、3作目はカジュアルゲームを考えていると話す。「(アドウェイズのアフィリエイトプログラムである)JANetで反応率が高いのは女性」(内村氏)であることから、より女性が気軽に遊べるカジュアルゲームを提供し、アフィリエイト広告と相性のよいユーザーの獲得を目指す。
アドウェイズとハイファイブ・エンターテインメントとが今回の試みを行った理由のひとつは「ゲーム広告はこのままだと日本で盛り上がらないのではないか」(内村氏)という危惧を、両社が参加したミーティングで抱いたからだという。
これと同じ事を考えているのが、アドプレイン代表取締役社長 インタラクティブ・プロデューサーの川村佳央氏だ。「このままだと、日本のゲーム内広告の状況は変わらない可能性がある」と川村氏は懸念する。
アドプレインはゲーム内広告を販売する代理店で、サイバーエージェントグループの1社だ。サイバーエージェントの事業提案制度で事業案が認められ、2006年に会社を設立した。
川村氏は、米国と日本とはゲーム内広告の置かれる状況が違うと話す。米国では、レースゲームやスポーツゲームなどの人気が高く、ゲーム内の看板などに広告を掲載してもゲームの世界観を崩さない。
さらに、利用するメディアの状況も米国は日本と異なる。川村氏によれば「米国では、10代後半男の子はゲームばかりやっていて、テレビを見ないというデータが出ている。テレビは若者向けのメディアとしては厳しい状況になっている。これに対し日本では、テレビを視聴する割合が老若男女を問わず高い」。米国ではテレビの影響力が下がり、ほかのメディアに広告主が移っているが、日本ではまだテレビの影響力が高いため、広告主がゲーム内広告に移りにくいというわけだ。
では、日本でのゲーム内広告は今後どういった方向へと進んでいくのか。アドバゲーミングシニアマネージャーの横地潤氏は「バーチャルプロモーションという日本独自の技法ができあがるのではないか」と述べる。
日本はOOH(Out of Home、屋外広告など家庭以外で接触する広告の総称)を活用したリアルプロモーションや、人が集まる場所でのプロモーションが発達している。この延長として、オンラインゲームやSecond Lifeなどの仮想世界に合うプロモーション技法が発達していくのではないかというのだ。
また、アドプレインの川村氏は「単純に推定接触者数などで比較するのではなく、メディアとしての意義付けが重要」と話す。つまり、ゲームを含めた仮想世界をメディアの1つとして確立させ、テレビなどの既存メディアと共存する道を探る必要がある。
バーチャルプロモーションの意義はその同期性にあると川村氏は言う。多くの人が同じ場所に集まることでリアルタイムのコミュニケーションが生まれる。プロモーションイベントを通じ、ゲームのユーザー、広告主、ゲーム会社がそれぞれの立場から一緒になって盛り上がる。そこでは、一緒に時間をすごす人々が最高のコンテンツだということになる。
広告という活動を材料にして企業とユーザーがコミュニケーションする場を作り出す――これがバーチャルプロモーションの本質と言えるだろう。
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