これまでの連載では、ゲーム内広告の定義やオンラインゲーム各社の取り組みなどを紹介した。今回は、ゲーム内広告の課題と将来像について見ていく。
日本におけるゲーム内広告の最大の課題は、広告主が「広告効果が実証された事例がない」という理由で敬遠すること。つまり、ゲームというメディアに広告主がつかないことにある。現在は「広告主と一緒に事例を作っていこうと、前向きに話を進めている」(CJインターネットジャパン マーケティング部長の沈宰範氏)という段階だ。
それでも、オンラインゲーム会社がゲーム内広告に寄せる期待は強い。将来的に、全売り上げに占めるゲーム内広告の割合は「日本では全体の売り上げの約1割くらい」(CJインターネットジャパンの沈氏)、「現行のアットゲームズでは全体の1割程度。ゲーム内広告を前提としたビジネスモデルを組めば、全体の3〜4割を占めるようになるだろう」(ジークレスト執行役員ポータル事業部長の末光晴人氏)と各社は見る。
そして、ゲーム内広告に熱い視線を送るのはオンラインゲーム会社だけではない。アフィリエイトサービス事業を手がけるアドウェイズは、オンラインゲーム会社のハイファイブ・エンターテインメントと業務提携し、完全無料のオンラインロールプレイングゲーム(RPG)「アドクエ」を提供する。月額課金やアイテム課金などのユーザー課金は考えておらず、完全な広告モデルで運営していく。
アドウェイズ ビジネスデベロップメントグループ 国内・海外事業開発チーム/インターネットチーム チーフマネージャーの内村隆男氏は「我々は新規に広告主を探す必要がない。アフィリエイトサービス向けに成果報酬型の広告を出稿する広告主がすでにいるからだ」と述べる。ゲーム内に広告を掲載するインゲームズアドや、ゲーム内で製品をプロモーションするインゲームズプロモーションだけでなく、サイト広告も含めて考えているといい、どの形態であっても成果報酬型にするという。このため、多くの広告主企業は、実績の少ないゲーム内広告であっても乗り気になってくれるのだと内村氏は話す。
すでに多くの広告主を持つアドウェイズにとっての課題は、むしろユーザーが集まるかどうかだ。成果報酬型広告をクリックしてくれる可能性のある人、つまりユーザー数は多ければ多いほど良い。ゲームのコア層だけでなく、どれだけ多くの一般ユーザーをゲームに呼び込めるかが、このモデルの肝となる。
この点についてアドウェイズは2つの仕掛けを用意している。ひとつは、必要となるPCのスペックを低くすることで、多くの人が気軽に遊べるようにしたこと。もうひとつは、アドウェイズのアフィリエイト広告を使ってユーザーを誘導することだ。アフィリエイト契約をしているゲームファンサイトの運営者と共同でキャンペーンを展開してユーザーを誘導することも検討している。
アドウェイズとハイファイブ・エンターテインメントのモデルは、CJインターネットジャパンやジークレストなどのモデルとは反対の発想に基づいている。
CJインターネットジャパンやジークレストのもとには、先にユーザーが集まっている。そのサービスを運営していくための収入源を多様化するべく、ゲーム内に広告を掲載する。そのため、広告主を集める努力と、ユーザーに違和感なく広告を受け入れてもらう手法の開発を、広告代理店などと共同でする必要がある。
逆にアドウェイズのもとには、先に広告主が集まっている。その広告を露出させるメディアを多様化するべく、魅力的なコンテンツの1つとしてオンラインRPGを運営する。必要なのはそのメディアを閲覧、利用するユーザーを集めることだ。
ただし、サーバ負荷の大きいオンラインRPGを無料で運営するには、相当の広告収入が必要となる。他社が「全体の売り上げの1割程度」と見込むゲーム内広告の収入だけで、運営費用をまかなえるのだろうか。
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