Opteron対Xeon、そしてXeon対Itanium?--サーバプロセッサ市場の動きをふり返る

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年08月16日 17時04分
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 今年前半のサーバ向けプロセッサ市場における最大の話題は、何と言ってもIntelのXeonプロセッサが64ビット対応となったことだろう。この背景には、昨年4月に発表された競合AMDのOpteronがx86プロセッサとしてはじめて32/64ビット対応となり、各サーバベンダーから注目を集めたことがある。Opteronが発表されてからの業界の動きや、Xeonが64ビット化に至った背景、またその影響などをふり返ってみよう。

 AMDがOpteronを発表したのは昨年の4月22日。32ビットと64ビット双方に対応する同プロセッサは、既存の32ビットソフトウェア資産を生かしつつ64ビットソフトウェアへの移行がスムーズに行えるとして、投資保護の観点からも注目を浴びた。IBMがリリース当初から同プロセッサを同社のサーバに搭載すると発表したことに加え、64ビットプロセッサは自社製品のUltraSparcのみを採用するとしていたSun Microsystemsも昨年秋にはAMDと提携した。さらに、Intelと共同でItaniumを開発していたHewlett-Packard(HP)までもが今年に入ってOpteronの採用を発表したのである。このようにOpteron登場後1年の動きをふり返ってみても、同プロセッサが少なくともサーバベンダーの支持を得ていることは明白だ。

 Opteron発表以来のAMDの決算も好調で、プロセッサ事業の利益率アップや同社の黒字化にOpteronが大きく貢献したといわれている。また、ガートナーの半導体市場調査においても、2003年度は64ビットプロセッサ市場でAMDがトップシェアを獲得したとしている。さらに、ハードウェアベンダーのみならず、ソフトウェアベンダーであるMicrosoftもOpteronに対応する64ビットバージョンWindowsを今年後半に発表することを表明しており、それまでに出荷されるOpteron搭載システムに同社の64ビット対応Windows Server 2003のベータ英語版を添付するということも発表している。またIBMも、同社のDB2データベースソフトを、Opteron用の64ビットLinuxに移植したバージョンをリリースしている。いっぽう、真の64ビット環境をねらってIntelが市場投入したItaniumは、x86チップの人気の高さからすでに「ニッチ市場向け」とされる向きもある。

サーバベンダーの本気度は?

 x86サーバ市場での実績が浅いSun Microsystemsにとって、Opteronの採用は同社のサーバ事業を拡大するきっかけとなる可能性を秘めている。同社のAMDとの提携は、技術・マーケティング共に協業するというものだ。今年2月にOpteron搭載2ウェイサーバを発表したSunは、7月に同4ウェイサーバを発表している。また、日本のサン・マイクロシステムズ本社内にはAMDと共同でアプリケーション検証センターが開設される予定で、2004年後半にはOpteron対応の64ビット版Solarisがリリースされるという。さらに、将来的にはOpteron搭載の8ウェイシステムやブレード製品、ワークステーションなどもリリース予定だとしている。なお、Sunは今年2月に、同社共同創業者のAndy Bechtolsheimが設立したOpteronサーバに特化するベンチャー、Kealiaを買収している。

 いっぽう、HPはItaniumチップの開発をIntelと共同で行うなど、Sunと比べるとIntelとの関係がより密接であるにもかかわらず、Opteronの採用に踏み切った。これについてRedMonkのアナリスト、James Governorは、Opteron搭載マシンの販売が好調である反面、Itanium搭載システムを導入する企業は限られているため、HPはOpteronを採用せずにいられない状況となったと指摘している(「どうなるItanium?--HPがOpteronサーバ発売へ」)。HPとAMDとの提携内容の詳細は明らかにされていないが、この提携は数年間にわたるもので、HPは同事業に数百万ドルを投資することになるという。ただしHPは、Opteron採用を発表した際に、Itaniumへの取り組みをないがしろにするものではないことを強調している。

 海外大手サーバベンダー4社のなかでOpteronの採用を発表していないのはDellのみだが、今年の3月にはDellのサイト上でAMDの広告が掲載されるといった「事件」もあり、同社がOpteron採用に踏み切るのではないかという噂は絶えない(その後Dellはすぐに広告の掲載を取りやめている)。ただし、現時点ではDellにそのような動きはないようである。

Intelがついに動いた

 Opteronを中心とした業界の動きにIntelもあせりを感じたのか、「Xeonは32ビット対応のみ、64ビットはItaniumで」という立場を崩さなかったIntelが、今年2月のIntel Developer ForumにてとうとうXeonを64ビット対応とすることを発表した。

 実は同社が32/64ビット対応チップの開発について議論をはじめたのは、10年も昔にさかのぼるのだという。ただし、同社がこのようなチップの開発に本気で取り組み始めたのは1999年頃。つまりAMDがのちにOpteronとして発表するチップのブループリントを発表した時期と重なっている。

 IntelがXeonを64ビット対応としたことで、AMDのOpteronの競争優位性が揺るぐことは間違いない。ただし、Opteronがいくら注目されているとはいえ、同チップ搭載サーバの販売台数は2003年第3四半期で1万746台(IDC調べ)。同時期におけるItanium搭載機の販売台数4957台と比べれば2倍以上になるとはいえ、その時点で32ビット対応のみであったXeon搭載サーバの販売台数118万台と比べると、足元にも及ばないのである。この数字を考えると、Xeonの64ビット化は、32/64ビット対応チップの市場活性化に結びつき、対応ソフトウェアが増える可能性もあるため、AMDにとっても不利な話ではないともいえる。

 いっぽう、IntelにとってXeonの64ビット化は、Itaniumの存在価値にも影響を与えるものとなる。調査会社Sageza GroupのCharles Kingは、Itaniumの普及が進まない原因がXeonの高性能化にあるのではないかと述べているほどだ。またIntelエンタープライズプラットフォームグループのゼネラルマネジャー(当時)、Mike Fisterは、Itaniumの低価格化が進み、数年以内にはXeonとItaniumの価格差がほぼなくなるだろうと発言しており、Itaniumの低価格化とXeonの高性能化で両プロセッサの差別化はますます難しくなりそうだ。

いよいよ64ビット対応Xeonのリリース

 Intelは6月29日、まずはワークステーション向けの64ビット対応Xeonを発表した。ようやくOpteronの対抗馬が登場し、64ビット市場での戦いが本格化することになったわけだが、国内で開催されたXeonの発表会で同社は、64ビット拡張機能について大きくアピールすることはなく、インテルの発表者からOpteronを意識した発言が出ることもなかった。同日、同チップ搭載ワークステーションを発表したデルや日本HPは、新製品の特徴として64ビット機能拡張を大々的に打ち出していたにも関わらず、である。

 そして8月には、64ビット対応Xeonのサーバ版が発表された。サーバ版発表にあたってIntelは、国内での発表会は開催していない。同チップのリリースに伴い、国内ではデル日本HPNEC日立などが新Xeon搭載サーバを発表したが、会見を行わなかったIntelは、海外大手サーバベンダー4社の中で唯一Opteronサーバを製品化していないデルの国内発表会にインテル 取締役 エンタープライズ&ネットワーク・ソリューションズ本部 本部長の町田栄作氏が登場し、挨拶を述べるにとどまった。

 64ビット拡張機能を持ったXeonに対して消極的な姿勢を取っているようにも見えるIntel。同プロセッサがItaniumの市場発展に影響を与える可能性があることを考えると、同社がXeonの存在をどうアピールすべきか、慎重になるのもうなずける。しかし、新Xeonの登場で64ビット市場が活性化することは間違いないだろう。今後もこの市場には目が離せそうにない。

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