「iOS 16」と「Android 13」が垣間見せるスマートフォンの未来

Lisa Eadicicco (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2022年06月16日 07時30分

 「iPhone」と「Android」スマートフォンは、ユーザーの生活のデジタルでない部分に、さらに緊密に織り込まれようとしている。これが、Appleの「iOS 16」とGoogleの「Android 13」での大きなテーマの1つだ。どちらも、両社のモバイルソフトウェアの最新アップデートとして、2022年後半の登場が予定されている。テクノロジー業界大手の両社が目指すのは、スマートフォンを法的な身分証明書を格納する電子ウォレットに変え、今まで以上に、スマートフォンをユーザーのアイデンティティーに結びつけやすくすることだ。また、両社とも、スマートフォンが自動車やスマートホーム機器、その他の日常的なデバイスと相互作用する方法について、向上への取り組みを続けている。

スマートフォン
iOS 16とAndroid 13は、オンラインとオフラインの両面でスマートフォンがわれわれの生活にとってもっと重要になることを示している。
提供:Sarah Tew/CNET

 iOS 16にもAndroid 13にも、細かい変更や新機能が目白押しで、デジタルウォレットや接続速度の向上より重要な機能もある(例えば、家庭内暴力の被害者を守るためのAppleの「Safety Check」ツール、Googleのプライバシーに関する新しいアップデートなどだ)。だが、両社のOSの共通点を見ると、私たちの生活におけるスマートフォンの役割の変化が如実に見えてくる。両社の最新の発表を踏まえると、スマートフォンをめぐって起きている変化は、スマートフォンの中で起きている変化に劣らず重要になる。

 スマートフォンと、財布やクレジットカード、車、家電製品といった生活必需品との結び付きが強くなればなるほど、スマートフォンから離れる(あるいは、iPhoneとAndroidの間で乗り換える)のは難しくなる。このコンセプト自体は新しいものではなく、業界は何年もその方向に動いてきた。だが、iOS 16とAndroid 13での変化はAppleとGoogleそれぞれのアプローチを大きく改良するものであり、そうした取り組みを加速する可能性がある。

Googleのデジタル免許証
GoogleはGoogle Payにデジタル免許証を追加した。
提供:Google; screenshot by CNET

 デジタルウォレットは、AppleがiOS 16を発表したときも、GoogleがAndroid 13のプレビューを披露したときも、大きな目玉だった。特に大きい変化は、「Apple Pay」に追加される新しいオプションだ。「Apple Payで後払い」と呼ばれる機能で、購入代金を6週間にわたって4回の均等払いに分割することができる。iOS 16では、「Appleウォレット」に格納されるIDカードが、アプリでの年齢確認にも使えるようになる。Appleは2021年にまずデジタルIDへの対応を導入しているが、それに続く追加機能だ。

 一方のGoogleは、5月に開催した「Google I/O」カンファレンスで、「Google Wallet」アプリの大幅な改良を発表している。新しいGoogle Walletは、決済や公共交通カード、ワクチン接種記録、搭乗券、学生証といった個人情報を格納できるようになり、Appleウォレットに近くなる。またGoogleは、デジタルIDに対応すべく政府機関に働きかけている。

 まとめてみると、AppleとGoogleの今回のアップデートは、物理的な財布からの移行という共通の目的に向けた新たな一歩だ。当然ながら、私たちのモバイルデバイス依存を強める変化でもある。

 そうした変化を目指す意欲を、Googleは改めて語った。5月のGoogle I/Oで新しいアップデートを詳しく発表する直前のことだ。

 「実際に、私も最近は家を出るときに必ず持つものは2つしかない。スマートフォンと財布だ」。Androidおよび「Google Play」の製品管理担当バイスプレジデントを務めるSameer Samat氏は、壇上でそう語った。「となると、問題はスマートフォンが財布の代わりになるかということだ」

 AppleウォレットおよびApple Pay担当シニアディレクターのCorey Fugman氏からも、米国時間6月6日のWorldwide Developers Conference(WWDC)基調講演で同じような趣旨の発言があった。

 「当社は、ユーザーの物理的な財布をAppleウォレットで置き換えるという目標に向けて尽力している」

 物理的なクレジットカードからスマートフォン搭載の決済アプリに移行するというアイデアは、だいぶ受け入れられてきた。Apple Payなど店頭でのモバイル決済システムの利用率は、2025年までに、米国の全スマートフォンユーザーの50%を超えると、eMarketerの2021年度報告書では予測されている。Appleが新たにApple Payで後払い機能を追加し、Googleが独自のモバイルウォレットへの取り組みを刷新したことで、財布を持ち歩かないというアイディアは、さらに魅力的になるかもしれない。

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