物理的な財布からの移行は、オフラインの生活でもスマートフォンをもっと便利なものにしようという、AppleとGoogleの狙いの一部にすぎない。スマートフォンのカメラを使って、現実世界の特定のポイント(POI)でさまざまなタスクを容易にするツールも、両社は導入している。ほかにも、モバイルデバイスと家電製品、車、スピーカーとの相互接続性を強化するというのも、大きなテーマだ。
AppleもGoogleも、ユーザーが身の回りの世界と触れ合うときに、カメラが引き続き重要な役割を果たすと考えている。iOS 16では、「翻訳」アプリの新しいカメラオプションを使って、文章を別の言語に翻訳できるようになる。WWDCの基調講演では、その機能を利用してレストランのメニューを丸々、異なる言語に翻訳する様子が披露された。さらに、写真に写った文字をタップするだけで、フライトの確認や通貨の換算もできるようになる。
Google I/Oでは、「Googleレンズ」アプリの拡張機能として、「scene exploration」(シーン探索)が紹介された。基本的には、Googleの誇る検索機能を現実世界に応用するものだ。棚に並んだ商品にカメラを向けるだけで、画面上に情報や評価が重ねて表示され、商品選びの参考になる。Google検索の責任者を務めるPrabhakar Raghavan氏は、ナッツが入っていないスナック菓子や無香料の化粧水などを店頭で確認できるという例を挙げてこの機能を紹介している。
実現するものは異なっているにしても、コンセプトは似ている。スマートフォンを操作して食べ物や日用品を注文したりタクシーを呼んだりといった使い方に、私たちはもう慣れきっている。今度は、AppleとGoogleが、現実世界でもスマートフォンをそのようなタスクの遂行に不可欠なものにしようと考えており、カメラがその大役を果たすということだ。
両社は、スマートフォンを家電製品の接続ハブにするというそれぞれのビジョンにも磨きをかけている。Googleの説明によると、Android 13では、高速なペアリングや、デバイス間のオーディオ自動切り替えへの対応、スマートフォンとコンピューター間でのメッセージ同期を容易にする機能により、スマートフォンと他のデバイスとの接続性が向上するという。また、「Android Auto」については新たに画面分割インターフェースが発表され、車を運転中のマルチタスクが容易になるはずだ。
Appleは、iPhoneの「ホーム」アプリを見直して、「HomeKit」デバイスの管理プロセスを単純化している。だが、AppleがiPhoneのリーチを拡大しようとしている最大の分野は、ひょっとすると車かもしれない。「CarPlay」の刷新を部分的に発表したが、CarPlayソフトウェアは、完全な車載OSのように感じられた。アプリアイコンやウィジェットといったユーザーインターフェース要素が並んでおり、iPhoneや「Apple Watch」とよく似ている。
スマートホームもコネクテッドカーも、新しいアイデアではない。何年も前から、AppleとGoogleそれぞれの戦略で重要な存在だ。しかし、iOS 16とAndroid 13では、両社が、こうしたデバイス間の通信や相互作用をどうすべきだと考えているのか、そのビジョンが明確になっている。
スマートフォンが、クレジットカードから温度調節機能、自動車まで、あらゆるものとのリンクになっていくにつれて、AppleとGoogleはスマートフォンの見た目の個人化も進めつつある。2022年秋にiOS 16がリリースされれば、iPhoneのロック画面は一新され、Apple Watchのようなウィジェットや、背景画像の新しい写真効果などが追加される。Googleも、「Material You」を拡張し、既製のカラーセットをOS全体に適用できるようになる。
iOS 16とAndroid 13で登場するのは、新しいウォレット機能、現実世界のモノをスキャンするカメラツール、接続性の向上だけではない。こうしたアップデートは、オンラインとオフラインどちらの生活でもスマートフォンが不可欠になりつつあることを示しているだけでなく、業界が次に向かう方向性も示している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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