シアトルの一角、1ブロックにわたって広がるAmazonの施設に、荷物ではなく人が整然と列を作っている。その1人であるAllison Sheafeさんは、同社のサウス・レイク・ユニオン本社近くにあるこのイベントスペース「Amazon Meeting Center」で、午前11時に新型コロナウイルスのワクチン接種を予約済みだ。玄関ホールを抜けて2階に上がり、実際にワクチン接種を受けたのが午前11時1分。観察スペースで15分様子を見たら、もう帰れる。
この一連の体験は、「全く文句なし」だったと語るSheafeさん。マスク越しにも笑顔が伝わってくる。「とても能率的だった」
こう感じているのは、おそらくSheafeさんだけではない。4月24日の時点で、シアトルに開かれたAmazonの臨時診療所では、すでに5万回のワクチン接種が行われていた。
2021年が始まると、米国は国民へのコロナウイルスワクチン接種という壮大な事業に着手した。Joe Biden大統領は、就任から100日以内に2億回のワクチン接種を進めるという目標を掲げ、政府はその目標を達成した。とはいえ、需要が供給を上回っている場合も多く、州内で速やかな接種に手間取っている州政府もある。同時に、ワクチンに関する誤情報も広まっており、ソーシャルメディア各社は不正確な内容の投稿の封じ込めと削除に追われている状況だ。米疾病予防管理センター(CDC)の最近のデータによると、PfizerとModernaのワクチンを接種した人のうち8%は2回目の接種を受けなかったという。ただし、その一部については、ワクチン提供業者間で情報が共有されていなかったために、2種類別々のワクチンを接種してしまった可能性がある。また一方には、コロナウイルスワクチンを完全に忌避している層もある。米国全土で、ワクチン接種が完全に済んでいるのはおよそ1億2400万人だ。
製薬業界がワクチンの供給に奔走する一方で、テクノロジー企業は独自のやり方で支援に乗り出した。Amazonがシアトルで実施しているような、ワクチン接種の物理的な会場の提供もその一環だ。また、GoogleやMicrosoft、Cloudflareのように、ソフトウェアを提供している企業もある。アクセスが集中する予約サイトのウェブトラフィック管理、事前登録と予約の効率化、州ごとのワクチン流通の追跡といった機能を持つソフトウェアだ。
こうした動向にも、国民へのワクチン接種を推進しようという試みの規模の大きさが如実に現れている。いくつもの業界や政府機関のリソースを活用する試みで、その範囲はメディアキャンペーンからソフトウェアまで、あらゆるものに及ぶ。そうしたソフトウェアの一部は、次のステップへの鍵にもなろうとしている。依然としてワクチン接種に二の足を踏む人々に対して、政府が支援プログラムを用意できるようにすることが狙いだ。
2020年のはじめ、Amazon、Microsoft、Googleの3社は他の大手企業とともに、ワクチン接種の診療所として各社の施設を提供することを約束した。Disney、Costco、Starbucksも同じように接種の拠点として施設を開放したり、接種のプロセスを早めるための支援を行ったりしている。Amazonは、施設に加えてロジスティクスの専門知識も提供しており、当初の約束を果たした。シアトルで、地元のバージニアメイソン病院と連携して1月から毎週末の1日または2日間、ワクチン接種の臨時診療所を運営しているのだ。3月には、バージニア州アーリントンにも同様の拠点を開設した。
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