完全オンライン開催となった「CES 2021」が公式に開幕した日の夜、筆者はデスクで座りながら、歌手のBillie Eilishさんが宇宙空間に浮かんだバーチャルステージでパフォーマンスを披露するのを見た。Eilishさんの下では、VIPラウンジとコンピューターアニメーションのダンサーに囲まれて、無数の小さなドットで表現された観客が、巨大なバーチャルアリーナのあちこちに浮かんでいた。
このデジタルのドット一つ一つが、自宅で画面の後ろに座っている実際の人間を表している。おそらく、その人たちも筆者と同じように困惑した表情をしていたはずだ。
バーチャルコンサートへようこそ。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、イベント主催者は、コンサートからスポーツイベント、カンファレンスまで、事実上、あらゆるイベントをどのような体験にするのかについて、再考せざるを得なくなっている。ラスベガスで毎年開催されてきたCESは、その典型的な例だった。
私たちは、マスクの着用やソーシャルディスタンスの維持といった感染対策に適応してきたのと同じように、コンサートで誰かと一緒に音楽を楽しみたければ、画面上の小さなドットをドラッグしてチャットボックスに入るしかない、そんな新たな現実にも適応しなければならなくなった。
この1年間は、世界最大級のモバイル見本市「Mobile World Congress」から野外音楽フェスの「Glastonbury Festival」、漫画、アニメ、映画などに関するコンベンションの「コミコン」まで、ほぼすべての主要なイベントが中止または延期されるか、デジタルの形で開催された。2021年のサンダンス映画祭は、(ほぼ完全に)リモートで開催された。オンライン開催の道を選択すれば、より幅広い人々にイベントに参加してもらうことができるが、画面を見ることに疲れている人にイベントへの参加を促すことは、主催者にとって無理難題な場合もある。
それでも、現在は新型コロナワクチンの接種が開始されたばかりの段階なので、少なくとも2021年中はライブストリームやオンラインでの開催、交流が必要になるだろう、と専門家は予想する。実のところ、こうしたの変化の一部は永続的なものになる可能性が高いため、従来の方法では参加できなかった人々に、より多くのイベントの門戸が開かれるようになる可能性がある。
「Billie EilishさんやElton Johnさん、The Weekndさんを見るためにマディソンスクエアガーデンに行くファンがいなくなることはないだろう」。そう語るのは、米国のマスメディア企業であるiHeartMediaのエンターテインメントエンタープライズ担当プレジデントを務めるJohn Sykes氏だ。「だが、観客席のファンにインタラクティブなつながりの要素が提供されるようになるかもしれない。この1年間を通して完成してきたデジタル配信を通して、そのショーが会場の外にも提供され続ける可能性がある」
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