新型コロナウイルスの影響によるロックダウンが始まった1年前から、世界中が仕事や人との交流を「Zoom」などのビデオ会議サービスに頼るようになった。ニューヨーク州のある部局でプロジェクトマネージャーを務めるAmanda Stevensさんは、在宅勤務中のビデオ会議について、細かい点で不安をいくつか感じるようになったという。1つは、画面に映った自分の顔を延々と何時間も見なければならなくなった状況で、髪を整えたいという気持ちをずっと抑えていること。そしてもう1つは、「わが家の老犬は、不意に大きなおならをする。その音をマイクが拾ってしまったら、出どころは自分だと誤解されそうだということ」なのだという。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まって1年、ビデオ会議プラットフォームのおかげで、多くの人が在宅勤務に対応できるように、また家族や友人とのつながりを保てるようになった。そんななかで、「Zoom疲れ」という言葉をよく耳にするようになっている。これは、カメラを通じたミーティングで1日中スクリーンを眺め続けた後に、すっかり疲れ切ってしまうことだ。しかも、仕事が終わってからの付き合いもほとんどがカメラ越しになってしまうと、さらに疲れが重なる。一方、それに関連した「Zoom不安」という考え方は、それほど注目されていない。だが、多くの人にとってはZoom疲れより消耗しやすく、場合によってはキャリアにも悪影響をもたらしかねない。
Zoom不安についての研究は少ないが、2020年11月、在宅勤務者2000人超を対象に実施された調査によると、その原因はいくつもあることが分かった。映像や音声について自分では解決できない技術的なトラブルが起きてしまう、相手のボディーランゲージを読み取れない、自分の意見を聞いてもらえていないように感じる、身支度を整える時間がないまま応答しなければならない、仕事にふさわしくない自宅の背景が気になる、自分より大きな声に埋もれてしまう、といった懸念だ(念のために言っておくと、この記事ではあらゆるビデオ会議プラットフォームの代表として「Zoom」という言葉を使う。なにしろ、2020年にはビデオ会議を意味する動詞として使われるようになったくらいだからだ)。
「人と直に向き合っているときには、ボディーランゲージから無意識にたくさんのことを把握できる。相手の反応がよくなかったり、少し不愉快そうだったりすれば、それに気づく」。豪クイーンズランド州のボンド大学で組織行動学の准教授を務め、在宅勤務による心理的な影響について研究しているLibby Sander氏はこう説明する。「会話に割って入るタイミングもつかめるし、ある話題を続けていいかどうか、その場の空気を読んで判断することもできる。そういうことが、Zoomでは難しく、全くできないときもある」
米国ではワクチンの接種が全国的に進んでいるが、コロナ禍と、在宅勤務への移行によって、多くの企業ではハイブリッドな勤務形態への移行が進んでいる。つまり、勤務時間がオフィスと自宅に分かれることになるので、ビデオ会議は今後も続きそうだ。だが、カメラの利用が前提のツールを使うことに不安を感じているなら、それはあなただけではない。
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