これらの目標の実現に向けて同社では、「完全資源循環型で超高効率な食料供給システム」と、「閉鎖空間のQOL(Quality Of Life)を高める食のソリューション」の開発を2大テーマとして掲げている。そのなかでは、高効率かつ自動化された植物工場、培養肉などのバイオ食料の自動製造工場、QOLを向上させるための多様な食料生産を実現する拡張生態系、といったものを想定しているという。
これらを実際に作り上げるのに鍵になると小正氏が考えているのが、日本の技術や文化だと語る。ここで同氏は「既存の植物工場と比べて3~5倍の生産効率」を実現している植物工場や、少ない面積・容積のスペースで効率的に生産でき、栄養価も高いうえに二酸化炭素を酸素に変える光合成も行う「ミドリムシ」、培養肉を低コストで生産できる技術をもつベンチャー企業などをスライドで示した。
さらに、収穫を高精度に行う農作業ロボットや、すでに宇宙ステーションでの稼働実績もある遠隔操作ロボット、食料を“印刷”できる3Dフードプリンターを手がける企業、月面の砂で再利用可能な容器を作っている企業などを、宇宙開発の支援につながる日本発のものとして紹介。「日本は遅れているように見えて、実は粒ぞろいの優位性の高いキーテクノロジーが存在している」というのが小正氏の見立てだ。
また、現在の宇宙ステーションにおいては「長年、栄養価重視で進んできた」とのことで、味に関しては妥協してきたようだが、「閉鎖的な環境では味がダメだと気が滅入ってしまうので、味はどんどん向上させなければいけない」と考えている。日本が手がける宇宙食は「世界で一番おいしいと言われている」こともあり、この分野は今後も日本の企業に期待できそうだ。
ただ、宇宙開発が進んで宇宙ステーションから月、さらには火星へと拠点が遠くなるほど、“地球発”のおいしい宇宙食を作ることが難しくなるという問題点も指摘する。「輸送コストの問題があり、補給が途絶える可能性もある。現地で作ることが必要になってくるため、少ない食材でいかにおいしくできるか。企業のいろいろな技術、食品メーカーやシェフの方が持っている知見が必要になってくる」とする。
先述のイーロン・マスク氏やジェフ・ベゾス氏のように、宇宙開発においては大規模な投資による“パワーゲーム”が目立っているものの、持続的な暮らしを実現するための技術開発については「そこまで大きな投資をしなくても進められる。暮らしのための技術、知見は日本が得意な分野でもある」とし、「強みを生かしながら、他国と連携しながら、日本の強み、欧米の強み、それぞれが役割分担をしてお互いに強みを補完し合いながらやっていく」ことが重要だと語った。
2100年までは長い道のりとなる。しかし小正氏は、5年というある程度短いスパンで、開発した技術を地球上に還元していくとも話す。「我々がこれから構築しようとしている技術・知見は、食料の供給方法やゴミが出ないようにする仕組みなど、災害やパンデミック時の課題解決にも活かせるもの。その社会実装を5年以内に進めたい」と明かした。
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