ニコンがCES2024で示した
「人と機械が共創する社会」とは

 ニコンといえば、世界でもトップレベルの光学機器メーカーであり、カメラや双眼鏡など、コンシューマーからの知名度も高い。また、高い光学技術や制御技術に基づく、半導体露光装置やレーザー測距装置といったBtoB向け製品でも高い評価を受けている。

 今回、ニコンはCES2024において、BtoB領域での新技術を中心に展示を行った。ニコンは、中期経営計画において、2030年のありたい姿として、「人と機械が共創する社会の中心企業」を掲げている。今回のCES2024の展示もその文脈に基づくもので、特にデジタル技術を活用したものづくりである、デジタルマニュファクチャリングにフォーカスしたものとなっている。そこで、ニコンの次世代プロジェクト本部長の一ノ瀬剛氏に、CES2024の展示の目玉やニコンの強みについてお聞きした。

ニコン 次世代プロジェクト本部長の一ノ瀬剛氏
ニコン 次世代プロジェクト本部長の一ノ瀬剛氏

ニコンの得意とする
「光学」「精密制御」「画像処理」「非接触3次元計測」技術が
ものづくりを革新する

 ニコンは、世界を代表する光学機器メーカーとして、広く知られている会社である。ニコンと聞けば、高性能なカメラや双眼鏡などを思い浮かべる人が多いだろうが、ニコンはそうしたコンシューマー向け製品だけでなく、半導体の製造に欠かせない半導体露光装置やレーザーを利用して距離を計測するレーザー測距装置といったBtoB向け製品においても、高い技術を持つメーカーとしてワールドワイドで知られている。ニコンの得意な技術として「光学技術」「精密制御技術」「画像処理技術」「非接触3次元計測技術」が挙げられるが、ニコンはこれらの技術を組み合わせることで「デジタルマニュファクチャリング」の実現を目指している。

 デジタルマニュファクチャリングとは、デジタル技術を活用することで、一部の「匠」と呼ばれる職人に頼っていたものづくりを、幅広いシーンで応用しようという考え方であり、ものづくりにおけるDXといってもよい。日本はこれまでものづくりが得意な国とされてきたが、旋盤などを使う職人の技は少しずつ失われてしまっている。ニコンの持つ優れた技術によって実現されるデジタルマニュファクチャリングは、日本のものづくりの伝統を次世代に受け継ぐための切り札なのだ。

 ニコンのCES2024での展示のコンセプトは、デジタルマニュファクチャリングの重要な要素として挙げられる「人と機械の共創」である。「共創」とは、人と機械がそれぞれ得意な分野を担当し、共にものづくりを行うことであり、これからの人と機械、そしてAIとの関係性を示す重要なキーワードでもある。

CES2024でのニコンの展示の模様
CES2024でのニコンの展示の模様

ものづくりの革新と社会課題の解決という2つの方向性がある

 ニコンの次世代プロジェクトを率いる一ノ瀬氏は、今回のCES2024でアピールしたいソリューションの方向性について、次のように語った。

 「大きく2つの方向性がある。1つは、誰にでも簡単に正確なものづくりができるという、ものづくりの革新だ。この方向性のソリューションとして、ロボットの高速な『目』となるロボットビジョンと、金属粉体を溶融して造形を行う金属3Dプリンターを開発している。もう1つは、ニコンの技術で製品に新たな価値を付与し、社会課題を解決するという方向性。その代表がレーザーによって表面に微細なパターニング加工を施すリブレットという技術で、世の中のさまざまな場面で活用でき、省エネルギー、CO2排出削減に貢献する」

ロボットに人間のような視覚を与える「ロボットビジョン」

 CES2024のニコンブースでは、一ノ瀬氏が挙げた3つのソリューション「ロボットビジョン」「金属3Dプリンター」「リブレット」に関する展示が行われたが、その中でも特にアピールしたいソリューションが「ロボットビジョン」である。ロボットビジョンとは、ロボットに人間のような視覚を与えるシステムだ。工場などのものづくりの現場では、アームロボットと呼ばれる腕のようなロボットが使われていることが多いが、ニコンが開発中のロボットビジョンは、そのアームに取り付けて使うことが想定されている。

 例えば、ロボットビジョンを持たないアームロボットでも、正しい位置と向きでベルトコンベアに載って運ばれてきた部品をアーム先端のハンドで掴んで持ち上げ、製品の所定の位置にはめ込むことはできるが、部品の位置や向きが少しでもずれてしまうと、その部品を掴むことができなくなってしまう。しかし、ロボットビジョンを取り付ければ、流れてくる部品の向きや位置がずれてしまった場合でも、素早くその部品の向きや位置を認識し、アームのハンドの動きを修正することで、問題なく部品を掴めるようになるのだ。もちろん、こうした作業は人間ならなんなくできることだが、ロボットに人間のような視覚と判断力を与えるのは、そう簡単ではない。

 ニコンのロボットビジョンには、ニコンが培ってきた「対象の部品を正確に認識させるための光学技術」「さまざまな部品の種類や状態を高速に検出する画像処理技術」「視覚情報をフィードバックしてロボットの動きをリアルタイムで制御する技術」「使い勝手を高め、柔軟なオペレーションを実現するソフトウェア技術」が利用されている。

ロボットビジョンをアームに取り付けた試作機
ロボットビジョンをアームに取り付けた試作機

2次元と3次元の両方のデータを取得し、
競合に比べて格段に速い認識速度が自慢

 ニコンのロボットビジョンの特徴は、2次元用カメラと3次元用カメラの両方を搭載し、2次元と3次元のデータを取得していることにある。競合製品の多くは、2次元のみ、または3次元のみのデータしか取得しておらず、ニコンのようなハイブリッド型は非常に珍しい。画像認識速度が競合製品に比べて、格段に高速なこともニコンのロボットビジョンの利点だ。

 「競合製品では2次元のみの場合でせいぜい100fps、データ量が多い3次元のみの場合だと30fps程度しか出ないが、ニコンのロボットビジョンでは、2次元での物体検出、3次元での物体検出ともに200fps以上を実現している」(一ノ瀬氏)

 200fpsというのは、1秒間に200枚以上認識できるということであり、1枚の画像を認識するのに、わずか0.005秒しかかかっていないことになる。この速さの秘密は、デジタルカメラで培った高速な画像処理アルゴリズムにある。

やぐらが不要で、アームに取り付けて使えることもメリット

 また、競合他社のロボットビジョンは、アームロボットに直接取り付けるのではなく、やぐらと呼ばれる高い塔を作り、その上にカメラを設置する固定型のシステムが多いが、やぐらを使わずにアームに固定するニコンの方式には大きなメリットがあると一ノ瀬氏は説明した。

 「やぐらに固定する方式は、やぐらを準備する手間がかかり、明日は別のラインで使いたいという場合でも、簡単に移動することができないので、多品種少量生産には向かない。しかし、我々のロボットビジョンはアームに取り付けて使うので、簡単に移動できる。さらに、アームの動作によって、カメラの視野を変えることができるので、見えづらい部品があった場合、見える角度に自分で動いて覗き込むことができる」

 ニコンのロボットビジョンは、物流分野でのダンボールソート、パレットに荷物を載せるパレタイジング、商品のピッキングのほか、自動車産業での組み立てラインや外観検査などへの使用が想定されている。ロボットビジョンを搭載したロボットが普及することによって、 生産現場の工員とロボットの負荷バランスをコントロールすることが可能で、効率的な生産が実現されて固定費削減につながり、製造原価を下げることができる。また、ロボットなら交代せずに24時間連続稼働が可能になるため、生産数をフレキシブルにコントロールできるようになることもメリットだ。製造現場は、一般に3K(きつい、汚い、危険)と言われることもあるが、ロボットが代わりに働いてくれるようになれば、人間は人間にしかできない、次のアイデアを考えることや未来を考えることに集中できるため、より良い未来の実現につながる。

 ニコンのロボットビジョンの利点を、一ノ瀬氏に整理して語ってもらった。

 「大きく3つある。1つは動的な物体の検出を可能にする高速な認識性能、それから多種多様な物体の認識を可能にする認識性能、そして柔軟性の高さ。世の中にはさまざまなアームロボットがあるが、多くのアームロボットに対応可能なように検討を進めている。柔軟性という点では、操作性についても注力しており、誰にでも簡単に高度な作業をロボットに任せることができる」

 操作性や使い勝手については、カメラなどのコンシューマー向け製品に対するユーザーのフィードバックも生きている。ロボットビジョンの開発をしていると、人間の目と頭脳のすごさを改めて実感するという。

 「人間なら取りにくい部品があれば、瞬時に目標を定めてずらしたり、向きを変えて取ったりすることができる。そのような人間の目や判断を動作につなげるという、人に近づけるテクノロジーの実現が大きな目標だ。我々のロボットビジョンなら、アームを動かして見る角度を変えたりできるが、こうした認識と動作を一体化したロボットビジョンは他社にない、我々の優位性だと思っている」(一ノ瀬氏)

 ロボットビジョンは、2024年6月の正式リリースを目指して鋭意開発中である。現在、ロボットビジョンのターゲットとなっているのは、生産現場や物流分野だが、今後は固定位置のロボットだけでなく、自律走行を行うAGVやAMRにも導入が見込まれる。また、一般生活でも生活支援ロボットなどが使われるようになるだろうが、ニコンのロボットビジョンは、そうした場面でも活用されるようになるだろう。

物体の表面にサメ肌加工を行い、流体摩擦抵抗を減らすリブレット加工

 ニコンはCES2024のブースで、リブレット加工についての展示も行っている。リブレット加工とは、レーザーによって対象物の表面に細かなパターンを削ることで、液体や気体との流体摩擦抵抗を減らす技術である。サメ肌を手本にした加工であり、ニコンの高度な光学技術と精密制御技術を利用することで、微細パターニング加工を実現しているのだ。

 以前、サメ肌水着によってタイムが大きく短縮されることがわかり、オリンピックなどでの利用が禁止されたことがあるが、それと同様の原理である。ニコンのリブレット技術は、基本的に平面だけでなく、曲面にも加工が可能であり、最大で流体摩擦抵抗を7%減らすことができる。ガスタービンの羽根やドローンのブレードをはじめ、身の回りの扇風機やサーキュレーターなど、リブレット加工によって流体摩擦抵抗を減らすことで、エネルギーを節約することができるようになり、CO2削減にも貢献する。

リブレット加工
リブレット加工

摩耗した部品の補修も可能な数少ない金属3Dプリンター

 CES2024のニコンブースでは、もう一つ、金属3Dプリンターについての展示も行われている。3Dプリンターは、アディティブ加工と呼ばれる、材料を削るのではなく積み上げて造形をする装置である。ニコンの金属3Dプリンターは、金属粉体による砂地を一面に引いて、そこにレーザーを照射して溶融して固め、1層目ができたら、残りのパウダーを回収してからまた1段下げて、一面に砂地を引くパウダーベッド方式と、金属粉体を上から吹き付けながら、中央でレーザーを照射し、粉体を溶融して重ねていくことで造形するDED方式の2つを展開。両方式をそろえ、顧客を開拓している。

 特にDED方式の金属3Dプリンターは、ニコンが得意とする計測技術を装置の中に搭載し、造形物を常に計測することで、競合では実現できていない精度の高い造形を可能にしていることがセールスポイントだ。

 さらに、長時間運用により摩耗してしまった金属ブレードを装置の中にある3Dスキャナーを使って計測し、新品のCADモデルと重ね合わせることで、どの場所がどれだけ摩耗したかということを割り出せる。 その摩耗した分だけブレードに粉体金属を溶融させて盛ることで、部品を新品状態に戻せる。これは、DED方式ならではのメリットだ。

アディティブ加工
アディティブ加工

最先端技術で、より良い未来を創造する

 ニコンは、最新の中期経営計画の中で、2030年にありたい姿として「人と機械が共創する社会の中心企業」を打ち出した。その中で、「光学技術」や「精密制御技術」といった、ニコンが持つ多彩な技術アセットを活用することで、自由で簡単なものづくり、社会環境課題の解決、自動化や効率化のためのロボット活用といった、社会に新たな価値をもたらす活動を進めていくことがミッションとされている。ニコンの今後の目標について、一ノ瀬氏は次のように語った。

 「今は1台のロボットに1つの仕事をさせることが主流だが、今後は1台のロボットで複数の作業ができるようになる。また、ロボットなら空中、海中、宇宙のような過酷な環境下でも作業ができる。その一方で、産業のさまざまな場面で、人がどれだけ効率良く活躍できるか、または活躍できるようになるのかということが求められている。人と機械の共創が社会の創造につながると考えていて、未来の当たり前をニコンの持つ価値ある技術で、作り続けたい」

「未来の当たり前をニコンの持つ価値ある技術で、作り続けたい」
「未来の当たり前をニコンの持つ価値ある技術で、作り続けたい」
提供:株式会社ニコン
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2024年3月31日

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