電通テックは9月3日、ユーザーに関わるあらゆる個人情報「パーソナルデータ」を一つのIDで統合・管理し、ユーザーと企業の双方にメリットのあるマーケティング支援サービスを提供する新会社「マイデータ・インテリジェンス」を設立したと発表した。
マイデータ・インテリジェンスは、パーソナルデータをユーザー自身が管理し、必要に応じて企業などに渡すことで、不必要な個人情報の登録を防ぎつつ、企業がパーソナルデータをユーザーから許諾を得る形でマーケティング活動に使用できるデータプラットフォーム「MEY」を提供する。サービスごとに登録していた個人情報をMEYへの登録に一本化することで、個人情報の流出などを抑えることができるとしている。
このサービスにより、高度化するマーケティングの課題や、自社内で持つデータの収集・運用に関するコストやリスクを下げることができるという。システムは、電通国際情報サービス(ISID)が開発。AI Insideが持つデータの分散匿名化技術を活用したPDSソリューションを採用することで、高いセキュリティを実現しているという。
ユーザーに対しては、データ使用にもとづく対価・インセンティブを提供し、マーケティングや商品開発、サービス開発に活用したい企業に対しては、ユーザーが許諾したデータを必要な分のみ提供する「マイデータ・バンク」を視野に入れているという。2019年春には、データマネジメントサービスの構築を見据えた大規模な実証実験を計画しており、ユーザーの合意形成と企業のニーズと利活用による成果を検証する。
電通テックは、電通グループでプロモーション領域を担当しているグループ会社。2016年からプロモーションのデジタル化が進む中、当初は効率と精度向上に努めてきたという。しかし、プロモーションの流れが、ペルソナ別に分けたユーザーの “塊”から個人ごとに広告を表示・コンバージョンさせるようになり、オンライン・オフライン問わず、顧客接点に関して電通グループのなかでも特に注力している。ここ数年でユーザーデータを年間2000万口以上扱うようになり、データマネジメントとソリューションの強化が課題となっていた。
また、大きなきっかけとして2017年5月の個人情報保護法の改正を挙げ、「各企業がパーソナルデータをマーケティングデータとして利活用するトリガーとなった。企業がファーストパティデータ(自社が保有するデータ)を構築する中で、マーケティングに活用できていないケースが多くあった」と指摘する。
さらに、総務省・経済産業省などを中心に、ユーザー自身がパーソナルデータを管理し、企業からの要望に応じてパーソナルデータを流通させるための環境整備が進められているという。また、EUではGDPRが2018年5月に発効され、パーソナルデータの管理・流通について、企業のガバナンス、コンプライアンスなどの観点から、より重要な課題になっている。
マイデータ・インテリジェンス代表取締役社長の石井尚二氏(電通テック執行役員)は、クライアントが抱えるユーザーを取り巻くデジタル化の進展に触れ、「ユーザー同士がSNSでつながることで、ユーザーの購買行動はそこに大きく依存するようになった。広告のあり方を一から見直すきっかけになった」としている。
一方で、「(各サービスが発行する)IDを国民平均で一人頭20個ぐらい持っていると言われており、ネット上に“未管理な自分”がいると言える」と指摘。ID管理が今後も一層加速し、一つのIDがユーザーの経験を重層化していくのがポイントになることから、自らがサービス事業者となり、ユーザーと企業との中間に立ってエコシステムを作ることが必要と3年ほど前から計画を進め、個人情報をユーザー自身で管理できるプラットフォームとして、MEYの提供に至った。
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