AR市場で優位なのは遅れてきたアップルか--競合にない強みとは

Sean Hollister (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2017年06月29日 07時30分

 Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏が仮想現実(VR)と拡張現実(AR)に大きな関心を抱いていることは、以前から知られていた。だが、Appleは6月、ついに公の場で、自社の計画を世界に向けて明かした。

 Appleは「Worldwide Developers Conference」(WWDC)で長い時間を費やして、VRを「Mac」に、そしてARを「iPad」と「iPhone」にもたらす野心的な新計画を説明した。

 FacebookやGoogle、Microsoftと同様(これらの企業も最近の開発者カンファレンスでARとVRの計画を披露している)、Appleも今回の発表で、まだ見ぬコンピューティングの未来をめぐる戦いに加わることになった。

 VRでユーザーを遠く離れた場所や想像上の場所に連れていくにせよ、ARでどこからともなく仮想物体を出現させるにせよ、同社はつい先月までは参加していなかった戦いに、リスクを冒して突然加わることになった。

 Appleの成功は現時点では決して保証されていないが、同社には、いくつかの大きな強みがあるように思われる。

 本記事に関してAppleにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

figure_1 デジタルのオブジェクトを現実世界に重ねる技術は「拡張現実」とも「複合現実」とも呼ばれる。
提供:GIF by Sean Hollister/CNET

非常に快適に動作するAppleのARテクノロジ

 AppleはWWDCで初めて自社のARテクノロジのデモを公に披露した。それにもかかわらず、同社は既に優位な立場にいる可能性がある。Appleの「ARKit」が必ずしもGoogleの「Tango」よりうまく動作するわけではない。だが、GoogleのTangoでは、多数の光学センサを搭載する特別なスマートフォンが必要になる。

 われわれは、市販されているiPhoneのカメラ1つで、これだけ高い水準のARが実現されるとは全く予想していなかった。

 全体的に見ると、Appleの手法は、「iPhone 7 Plus」のデュアルカメラさえ使用することなく、仮想物体を現実世界に重ねる機能を大変見事に実現しているようだ(AppleはWWDCで、開発者が近いうちにその2つ目のカメラからの計算も組み込めるようになることを発表した)。

 さらに、Appleのテクノロジは、WWDCのデモ内でのみ正常に動作するわけではない。新しい「iOS 11」プレビュービルドを自分のiPhoneやiPadにインストールした開発者がYouTube動画をアップロードしており、それらの動画を見ると、Appleのテクノロジは現実世界のさまざまな環境や照明条件でも正常に動作していることが分かる。

既に数百万台規模のAR市場

 最近のiPhoneやiPadの全てがARアプリを実行できるようになるわけではないが、それが可能な端末は既に何百万台も存在する。おそらく、これから登場する全てのiPhoneとiPadも対応するようになるはずだ。GoogleのARの取り組みでは、そうはいかない。同社はそれぞれの「Android」ハードウェアパートナーに対して、大きくておそらく高価なTangoセンサモジュールをスマートフォンの背面に搭載するよう説得しなければならないだけでなく、消費者に対しても、それらのセンサを搭載しない洗練されたデザインの端末ではなく、センサを搭載する専用端末を購入するように納得させる必要がある。

 現在のところ、Tangoをサポートするスマートフォンは2機種しか存在せず、そのうちの1つ、Lenovo「Phab 2 Pro」の評価は微妙である。もう1つのASUS「ZenFone AR」は2017年夏に、米国でVerizonが独占販売する予定だ。

 単一のカメラを使用するシンプルなARの手法をGoogleも採用したらどうなるだろうか。Androidは多種多様なスマートフォンやさまざまなバージョンのソフトウェア上で動作するため、追いつくのは難しいかもしれない。AR分野のライバルであるFacebookやMicrosoft、Snapchatの場合、状況はさらに厳しくなる可能性がある。これらの企業は、独自の人気スマートフォンを有していないため、iOSやAndroidで動作するアプリを開発しなければならないからだ。

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