マーケティングソフトウェアを手掛ける米HubSpotは、年次カンファレンス「INBOUND 2016」を米国時間11月8~11日にかけてボストンで開催した。マーケティングやセールスの専門家が世界各国から集まり、著名人による基調講演や数多くのセッション、ハンズオンが開かれ、大盛況のうちに幕を閉じた。
マーケティング分野の変遷やビジネス戦略の進展、検索分野とコンテンツ制作に起こっている変化、チャットボットの可能性について、同社の共同創業者であるBrian Halligan氏(CEO)とDharmesh Shah氏(CTO)に聞いた。
――これまでのINBOUNDを振り返って、どのような変化が見られますか。
Halligan氏:2つの変化に気付きました。まず、イベントが大きくなったこと。INBOUND 2016には1万9000人が参加しました。5年前ぐらいは2000人規模でしたから、本当に大きくなりました。2つ目は、参加者がよりテクノロジに詳しくなり、洗練されてきたということです。私たちがマーケティングの世界に参入したとき、マーケターたちはそれほどテクノロジに詳しくなく、デザインやブランディングの領域が主で、分析主導型の業種ではありませんでした。インターネットであらゆる活動を計測できる時代になりましたので、ますます技術中心の考え方になってきています。
マーケティングは、BtoBの分野でさらに重要になっています。例えば、10年前、見込み顧客を説得する役割分担は、営業部門が90%、マーケティング部門が10%の割合でしたが、いまでは五分五分です。つまり、見込み顧客が企業サイトのコンテンツやSNSに触れる時間と、営業担当と話をする時間は半々ということです。マーケティング部門に影響力が大きくシフトしているのです。
それからSNSの変化も見逃せません。多くの購入者が、Google、Snapchat、Twitter、LinkedInなどのソーシャルプラットフォームの中で活動しています。SNSは購入者の説得プロセスにおいて、いまだかつてないほど重要になってきています。
Shah氏:参加者について見ると、より国際的になりました。5、6年前は、20代の米国出身者が中心でしたが、いまでは欧州やアジア、南米からの参加者を目にします。このような他の地域出身の人たちを見ていて面白いのは、それがまるでタイムマシンに乗り込むような感じということです。つまり、彼らの多くは、我々が8、9年前に経験したことを体験しているのです。というのも、彼らはインバウンドマーケティングを始めたばかりで、それはちょうどHubSpotの創業当時と同じような状況です。みんながとてもエネルギッシュでワクワクしていて、それはまるで少し昔に戻ったような、すごく楽しい物語を振り返っているような感じです。私たちはその先で何が起こるかを知っていますから、彼らにどうすべきかを伝えることができるわけです。
――HubSpotのビジネス戦略はどのように進んでいますか。
Halligan氏:HubSpotの成長の歴史を振り返りましょう。最初の4年は、企業と接点のない人を企業サイトの訪問者に変える支援をしてきました。次の4年で、企業のデータベース上で訪問者を見込み顧客に変えるソフトウェアを開発しました。最近では、企業データベース上で見込み客を顧客に変えるソフトウェア開発に取り組んでいます。これがこれまでのHubSpotの成長戦略となってきました。つまり、コンテンツマーケティングからマーケティングオートメーション、顧客関係管理(CRM)へとフォーカスが移り、活用範囲が拡大してきたわけです。
もう1つの大きな戦略は国際化です。ボストンで創業した当時は全てが地元の顧客でしたが、成長とともに米国全土に拡大していきました。その後、欧州に進出し、現在はアジアへ本格的に展開しています。日本にも大きな投資を行いました。
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