米国では(ニューヨーク市など一部の地域を除き)自動車は生活必需品のため、誰もが一生のうち何度も自動車の売買を経験する。ディーラーでの自動車購入は、新車にしろ中古車にしろ、強引なセールスや価格交渉に辟易する人が多い。
そうしたディーラー(中間業者)を抜いて、ネットを使って新たなビジネスモデルを構築しようという試みはWeb1.0の時代からあったが、オンラインで購入まで完結する仕組みは現れなかった。
しかし、最近、新車市場の倍の規模(年4000万ドル)であるという中古車市場を狙って、ネットで中古車売買をするスタートアップが次々に現れている。どこも、ディーラーより低価格で買えるというのがセールスポイントのひとつだ。
買い手は購入した車を巨大な自動車自動販売機(自動駐車場)で受け取るというCarvanaは日本でも注目を浴びたが、同社では中古車を主に競売やリース会社、レンタカー会社などから調達している。Carlypsoは卸オークションで中古車を見つけ、買い手を見つけてから買い取るというビジネスモデルで、買い手のための自動車調達サービスといえる。
一方、米国では個人がネット掲示板などを通じてマイカーを売買するのは昔から浸透しているが、欠陥車をつかまされないかという懸念がつねに付きまとうし、面倒である。
そうした個人間(P2P)の中古車売買を仲介し、売買までネットで完結するサービスも登場している。たとえば、Beepiではモバイルアプリを使ってスマホで代金支払いまで可能である。
購入前に試乗はできないが、購入者は同社の整備工による240項目車両点検レポートをオンラインで閲覧でき、車を受け取った後、試乗して満足であれば売買契約書を交わす仕組みだ。
その後10日間(または走行距離1000マイル以下までの間)、気に入らなければ無条件で返品できる。ただし返品率は3%以下という。
なお、支払方法はクレジットカード、Apple Pay、BitPay(ビットコイン)などでも可能で、オンラインで自動車ローンを申し込んだり、リース契約することも可能だ。
購入サイドは240項目点検に合格したものだけを買い取っており、ディーラーからの正式な下取り価格より1000ドル増の買い取り価格を保証している。平均10日ほどで買い手がつくそうだが、30日経っても売れない場合、Beepiが事前に合意した価格での買い取りを保証している。
そのため、扱うのは6年落ちまで、走行距離6万マイル未満の比較的新しい中古車に限っている。ただし、Beepiは今秋から卸売も開始し、個人の売主から買い取り条件に満たない中古車も買い取ってオークションでディーラーなどに販売する。
競合のShiftでは、購入前に試乗ができるが、買い取りは行っておらず仲介に徹している。Vroomでは中古車を買い取り整備してから販売しており、各社ビジネスモデルは少しずつ異なる。
乱立気味の感はあるが、米国では年に4500万台ほどの中古車が販売され、最大の中古車ディーラーでも販売数は年50万台ほどであり、まだまだ新規参入の余地がある。既存ディーラーも市場シェア死守のためサービスのデジタル化を進めているが、新規参入組も既存ディーラーとも売買して提携関係を築いており、今後、どのような市場展開になるのか楽しみである。
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