LINEが7月にNYSEでの上場を発表した。米国では、4月になってやっとIPOをするIT企業(DELLの子会社)が出たというほどの低調ぶりで、LINEのIPOがIT企業としては2016年最大になる可能性もある。
米国では、以前に比べスタートアップがIPOするまでの時期が伸びていることは書いたが、従来なら、とっくにIPOをしているような企業価値10億ドル以上のユニコーンが、その後も増え続け、今では100社を超えている。
「IPOをしなければならないということは、プライベートで資金が調達できなくなったことを意味する」と言う起業家がいるのも無理はない。IPOをしたユニコーンは、ことごとくプライベート資金調達時の評価額以下でしかIPOで調達できていないのだ。
実際、資金調達の道を断たれ、最後の手段としてIPOをするしかないスタートアップもある。資金調達条件としてIPOの期日を盛り込むVCもあり、IPOせざるを得ない場合もある。
2015年IPOをした企業向けクラウドストレージのBoxは、IPO前の企業価値23億ドルがIPOで16億ドルに縮小した。モバイル決済ユニコーンのSquareも、2014年の資金調達時に60億ドルの企業価値がついたが、2015年のIPOでは時価総額が半分以下の29億ドルだった。
こうした傾向に、米証券取引委員会(SEC)が「株式ブローカーがIT企業を現実よりバラ色に描いているのではないか」と懸念を示しているくらいだ。
株価も、IPOをしたIT企業の半数が公開価格を下回っているという状況だ。Squareの公開価格は9ドルだったが、株価は一時15ドルを超えたものの、今また10ドルを切っている。2015年に16ドルで公開したEtsyの株価は、2015年末からずっと10ドル以下で低迷している。
こうした厳しい状況を反映し、2015年、IPOを行ったIT企業は28社のみで、金融危機で株式市場が底を打った2009年以降、最悪の記録である。
IPOをしなければ企業価値を保てるかというと、そうではない。ウェアラブルのユニコーンJawboneは、以前の資金調達時には33億ドルだった評価額が、今年に入ってからの資金調達では15億に半減している。最近では、その名を聞くこともなくなったFoursquareも、3年前の評価額6億ドルが、今年の資金調達では2億5000ドルと半減以下である。
このように、最近、前回の資金調達時より評価額を下げて資金を集めるダウンラウンドが増えている。
以前、書いたようにミューチュアルファンドなども、こうしたスタートアップ(株式未公開)企業に投資しているが、2015年第4四半期、DropboxやSnapchatなどデカコーンの評価損の計上を余儀なくされた。
さらなる資金調達もIPOもできないスタートアップは廃業するか、(バブル価格でなく適正価格で)身売りするしかない。事実上、破たんしてたたき売られたFab.comについては以前に書いたが、その後も、一時は10億ドルの評価がついたGilt Groupeは2億5000万ドルで、6億ドルのYodleも3億ドルで買収された。
ITバブル1.0時には、つぶれたEコマースサイトを掲載する「ドットコム墓場」といったサイトが登場したが、「ユニコーンリスト」を公表している企業データベースのCB Insightsでは、ダウンラウンドしたスタートアップのリストも立ち上げている。
「これは“バブル崩壊”ではなく“大リセット(Great Reset)”」とバブル崩壊を否定し続けるVCもいるが、米IT業界の大リセットはすでに始まっているのである。
レイオフが始まったスタートアップ(前編)--困難な資金調達と枯渇@getglobal(日本語) @TweetinEng(英語)
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