「民泊」という言葉が生まれ、日本でもAirbnbが一挙に普及した。普及と同時に近所迷惑など、そのマイナス面がクローズアップされ、条例で規制する自治体も現れている。無許可営業(旅館業法違反)の摘発も行われており、個人経営者や法人経営者が書類送検されるケースもある。
米国での自治体による合法化については2014年に紹介したが、これは部屋貸しの「ホームシェアリング」は合法化する一方、丸ごと貸しの「バケーションレンタル」は規制するということであり、その後、同様に法制化する自治体が増え、無許可営業に対する取り締まりも強化されている。
サンタモニカでは今夏、Airbnbで5軒貸し出していた個人が7月に罰金他で3500ドルの支払いを命じられた。さらに2年の保護観察付きである。
この貸し手は民泊経営に関する書籍を出版し、経営希望者向けにアドバイスも提供していたといい、市としては見せしめのために摘発したようだ。この貸し手には、これまで何度も警告したものの、「あんな条例を実施できるはずがない」と豪語し営業をやめなかったという。同市では、2015年、1700軒ある民泊のうち約8割が違法営業ということだ。
サンタモニカでは2015年、30日未満の丸ごと貸しを禁止し、部屋貸しの場合は家主が居合わせること、かつ営業許可を取得して宿泊税14%を市に収めることを義務付けた。同市では、民泊違法営業摘発に3人の職員をあてている。
条例可決の日には市役所に、賛成派と反対派の両者が集まったが、米国の場合、近隣住民による反対以外に、長期賃貸物件が短期賃貸物件に置き換わることによる長期賃貸物件不足、家賃高騰が問題になっている。とくにサンタモニカやニューヨークなどのように家賃規制のある都市では、既存の借主を退去させて短期賃貸物件に切り替える大家が珍しくない。
一方、自宅を貸し出すことで生活費を工面している退職者などが、民泊禁止は違憲であるとして、サンタモニカ市を相手取って集団訴訟を起こしている。
2011年にいち早くAirbnbの規制に乗り出したニューヨークでは、その後も違法営業が後を絶たず、今年、Airbnbをはじめとする民泊仲介サイトでの違法物件の掲載を禁止する法案が州議会で可決された。州知事が署名すれば施行され、違反者は罰金最高1000ドル、3度目の違反では最高7500ドルの罰金が課される。
ロサンゼルスでも民泊規制条例が可決される見通しだが、それに先だって8月からAirbnbが市に代わって貸し手らから14%の宿泊税の徴収を始めている。すでに正直に宿泊税を支払っている貸し手からの分だけで会計年度分150万ドルに達しており、今後、徴収額は、少なくとも580万ドルに達すると市では見積もっている。
これだけの税収を放っておく自治体があるはずもなく、今後、民泊に対する宿泊税課税は標準となるだろう。
さらに米国では、最近、Airbnbでの人種差別も問題となっている。宿泊客が黒人とわかると予約を取り消されたり、黒人が申し込むと「空いていない」と断られるのに白人が申し込むと予約が通ったりするケースが次々に明るみに出た。黒人宿泊客を近所の人が空き巣と勘違いして警察に通報するなどの事件も報告されている。Airbnbの差別問題への対処は不十分という不満から、肌の色に関係なく安心し宿泊できるよう工夫した民泊仲介サイトも登場している。
短期賃貸の普及による長期賃貸物件の不足に加え、人種差別も明るみに出たことから、米議員には連邦政府としての民泊規制を促す声もある。
日本でも国による民泊新法の制定が進められており、文化交流を目的とした家主居住型(ホームシェアリング)と休眠地活用の家主不在型(バケーションレンタル)に区別し、年間営業日数の制限が設けられるようだ。米国の自治体では家主居住型で年間90日までが主流となっている。
訪日観光客急増によるホテル不足の解消や、空家を有効活用できる手段として期待される民泊。現在のグレーな状態を法制化することにより、宿泊客が安心して利用でき、かつ地域住民の生活を脅かさない環境が整ってはじめて、その効果が発揮されるのだろう。
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