米AppleがモバイルOS「iOS 9」で実装したアドブロック機能。日本での影響は限定的だとされているが、先は読めない。この状況に、メディア、広告代理店、広告主はどう対応すべきか――12月1、2日に開かれた「ad:tech tokyo 2015」のセッション「ネイティブアド VS アドブロック」で、スマートニュースの執行役員で広告事業開発担当の川崎裕一氏が持論を展開した。
「アドブロックで広告が表示されなくなると収入が減る。それをどうするか、といったメディア側の議論は多い。しかし実は、広告主や広告会社にとっても大きな問題だ」と川崎氏は語り、“アドブロックを促進するネガティブフィードバック”を表すフレームワークを示した。
簡単に説明すると、(1)アドブロックにより、メディアの広告面で広告が表示されにくくなると、(2)広告主や広告代理店は購入できる広告面が減るため、新たな広告面を見つけて新たな運用方法を考える必要が出てくる。(3)メディアはアドブロック対策として新たな広告フォーマットを提供しているが、現状、ユーザーの体験を損ねる形のものが少なくない。(4)ユーザーは広告を見たくなくなり、また新たにアドブロックを利用する人が増える――といった循環を示したものだ。
「ユーザー体験を無視して広告を作っていれば、在庫が減り続けていく世界になり得る。また、信頼性が著しく低く、かつ価値がない情報を広告として出している現状がある。そうすると、広告は信用されなくなり、『広告はつまらないし、役に立たないし、うざい』と思われてブロックされるようになる。広告が“見たくないもの”になっていることが問題の本質だ」(川崎氏)。
この循環をどう改善すればよいのか。川崎氏は次に“理想的なフィードバック”を表すフレームワークを示した。先ほどとは逆に、「最高のユーザー体験」を第一に考えて広告を提供することで、アドブロックを使うユーザーが減ると見通すものだ。
川崎氏は、ユーザーにとって価値のある広告を制作、掲載することが重要だと強調。自身が携わるスマートニュースでは「クリックされていなかったり、滞在時間が短かったりする記事は表示されない。実はその仕組みを広告にも適用している」という。
価値のある広告を作れない要因の1つとして、「広告を売る側、買う側のような対立構造になっている」と川崎氏は指摘。「新しい商品を一緒に作るために、メディアと広告主が同じ方向を向いて、ともに市場を大きくしようと考えない限り、悪循環から抜けられない」と訴えた。
「ユーザーがよい広告に出会い、よい体験をして、広告によい印象を抱かない限り、アドブロック問題の本質的な課題は解決しないと思っている」(川崎氏)。
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