デジタル広告、デジタルマーケティングの一大イベント「ad:tech tokyo 2015」が12月1日と2日に開催された。「Web広告映像の未来はどっちだ」と題されたカンファレンスでは、ネットで話題になった動画や受賞した動画の仕掛け人4人が、成果を上げるための動画の作り方のヒントをレクチャーした。
セッションでは、モデレーターとして「豆しば」や「YASUKAWA BUSHIDO PROJECT」を手がけた電通の阿部光史氏、サントリーC.C.レモンのCMを手がける博報堂ケトルの石原篤氏、資生堂でCMプランナーを務める小助川雅人氏、KINCHO(大日本除虫菊)のトイレ洗浄剤「サンポール」のCMを制作したワトソン・クリックの中治信博氏の4人が登壇した。
石原氏は、キックボクサーである現役女子高生が、身軽に校内や街中を駆け抜ける「忍者女子高生」を企画。ストーリー展開やキャストの意外性、一人称視点を多様した“生っぽい”撮影技法などが話題を呼び、YouTubeで791万再生(12月7日時点)をカウントする動画となった。
クライアントであるサントリーからの要求は、「広告なしで拡散し、再生回数を獲得する強いウェブ動画をつくる」というもの。そのお題に対し同氏は、「『女子高生が忍者になる』という一言タイトル」、「さまざまな『拡散要素』を編集したクリエイティブ」、さらには「テレビCMとは違うワークフロー」という3つのコンセプトを提案。インパクトだけでなく、女子高生、忍者、パルクール、現役プロキックボクサー、iPhone/GoProといった一般の人が使う機材など、多数の「要素」を動画に埋め込みながら「世の中のリアクションを想定して動画作りをした」という。
同氏にとって広告は「ワンメッセージにどれだけ集約していくか、それを軸にいろいろなコミュニケーションを設計できるか」という球体発想、PRは「オーディエンス、メディアや生活者がどんなリアクションをしてくれるのか、どういう関係性がその人たちと構築できるのかを想定・編集し、その上で外に出していく」という多面体発想であるとし、「広告発想とPR発想の両輪で、どう回していくかが大事」だと話す。
今回の忍者女子高生では、特にメディアにおいてどう取り上げられるかを具体的にイメージし、その場合、動画コンテンツとしてはどうあるべきかというフィードバックを元に、改めてそれを企画に落とし込んでいく「往復を何回もやった」。
「中に埋め込んでいる要素が勝手にPRされていく状態をコンテンツの中にどう作っていくか」が大きなポイントであり、「ウェブでは音楽、PVなど、いろいろな映像が競合になる。それらと戦う時、単純な広告ではなく面白いコンテンツにするために、どういう視点をもつか、どういうリアクションが生まれるかを想像したのが大きかった」と語った。
いくつかウェブ動画を作ってきた中で、同氏なりの「ウェブ動画の方程式」も発見した。それは、「○○が××する」というパターンに落とし込めるものだ。
今回でいえば「女子高生が忍者になる」だが、ほかに同氏が手がけたものとしては、「サムライがサッカーの本場ブラジルでリフティングする」がそれに当たる。
ただし、「ちょっと気弱で線の細い男子高校生が、脳波を探知して膨張する筋肉スーツを自分の体に仕込むことによって、意地悪な友達にちょっかいを出された時に膨張して強くなったような感じになる」という動画は全くウケなかったとのこと。
「超ハイコンテキストだとうまくいかない。最終的にいかにシンプルに一言で言えるかが大事だと思う」とした。
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