モバイルの重要性にいち早く着目し、「まだまだ道半ば」(田中氏)ながら国内で先進的な取り組みを続けているのが花王だ。同社の田中氏は「多くのお客さまがモバイルフレンドリー、クロスデバイスの環境に慣れてしまっている今、『対応していて当たり前』という思いが、無意識の期待値としてお客さまにできあがってしまっていると考える。そうした中で、企業サイトがそこに対応しないのはどうか」と疑問を呈する。
田中氏がモバイルで重要視しているのは、One Webだ。「ガラケーの時代など、ソーシャルメディアが出てくる前は、サイトが別々でもよかった。しかし現在は、たとえばPCからFacebookで『いいね!』してもらったページをスマートフォンで閲覧しようとした時にイコール(=)のページがないと、ユーザーがシェアしたいページではないところに飛ばされたりして、何に対する『いいね!』なのかがわからなかったりする。スマートフォンの普及率が上がってきた2~3年前に、『うちもやらなきゃまずいな』と痛感した」(同氏)。
花王の商品ページの中で特にモバイル比率が高いのは「赤ちゃんのおむつ」で、モバイルが8割を占めるという。「最も流入の多い検索ワードが『赤ちゃん うんち 緑』だったりする。まさしくマイクロモーメントで、赤ちゃんが緑色のうんちをして心配なときに、いちいちPCを起動して調べたりしない。すぐに手元のスマートフォンで調べるのだろうと思う」(同氏)。
モバイルに注力すべきと考えても、予算がなかったり、会社の上層部の理解がなかったりと、さまざまな壁がある。それをどう乗り越えればよいのか――田中氏は花王の実際のデータを見せ、「スマホ対応の必要性を訴えたい時にこの資料を見せると、大体みんなが『そうだよね』となる」と笑う。
田中氏は「社内でもこのデータを見せて、お客さまの環境が大きく変わってしまったことを伝えている。PCのユーザーが多くPC優先でウェブサイトを制作していた2012年頃の感覚をまだ引きずってしまっている人が多い」とし、PCサイトよりもスマートフォンサイトを優先して考えるように意識すべきだと強調した。
議論の途中で、グーグルのモバイル検索アルゴリズムの変更が話題にあがった。変更の影響が限定的だったため、占部氏が「もう少し検索結果の表示順位に変化があると、世の中がモバイルにシフトしたのではないか。あまり変わらなかったから、これでいい、と開き直る人が増えたようにも思う」と言うと、前川氏は「私はグーグルが大なたを振るったほうがいいと思う。グーグルはそうは言えないとは思うが、やるしかないと思っている」とコメント。
それを受けて水谷氏は「グーグルでは毎日のようにプロダクトのアップデートがあるため、遅かれ早かれ、何かしらの改善がある。実際にどうなるかはわからないが、準備だけは進めていたほうがいいと思う」と答えた。
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