デジタル広告、デジタルマーケティングの一大イベント「ad:tech tokyo 2015」が12月1、2日に開催された。
カンファレンスでは、「コンシューマー中心の広告評価指標を整備する」と題し、日本における広告、マーケティングのプラットフォーマーらが議論。CTRやSNSのシェアといった「メディア側の便利な数値」ではなく、消費者を中心に考えた広告の効果指標がどうあるべきかを語った。
登壇したのは、資生堂の小出誠氏、電通の眞鍋尚之氏、ニールセンの宮本淳氏、ヤフーの高田徹氏と、モデレーターであるフェイスブックの大志摩丈嗣氏の5人。最初に大志摩氏が投げかけた「デジタル(広告・マーケティング)の重要性が今後も加速度的に増すのではないか」という質問に対して、ニールセンの宮本氏は米本社が実施したデジタル広告とテレビのリーチに関する調査を引き合いに、肯定する意見を述べた。
調査によれば、米国における統合リーチは74.6%、うち重複するリーチは17.9%しかなく、デジタルでしかリーチできない層が年々増えてきているという。
ここには昨今の「メディアの分散」という課題があり、ライブやタイムシフト録画、VODといった視聴方法の違い、動画や静止画、音声、テキストなどコンテンツタイプの違い、テレビやPC、スマートフォン、タブレットのようなデバイスタイプの違い、放送やネット経由、ブラウザ、アプリなどのデリバリータイプの違いなど、多種多様に枝分かれしている。
また、米国では広告モデルにも違いが表れはじめており、番組(動画)とは別個に独立したコンテンツとなっている「リニア」広告と、視聴者のプロフィールに合わせて異なる内容を出し分ける、いわゆるターゲティング型の「ダイナミック」広告という2種類が主に活用されている。
ただ一方で日本市場を見ると、電通の眞鍋氏によれば、統合リーチは91.3%。うち重複するリーチは41.9%もあり、「日本ではテレビがお化け的なメディアになっていて、テレビのリーチが強い」という状況だ。
資生堂の小出氏も、「マス(テレビ)と同列にデジタルを検討するというスタンスは、プランニングにおいては弱い」と話し、その要因として「デジタルだけではリーチは稼げないのではないか、という感覚がマーケターにあるのではないか」と見る。
ここで宮本氏は、ブランド広告におけるプランニングや効果測定の指標として、「リーチ」「レゾナンス」「リアクション」を表す「3R」を解説した。
「リーチ」は広告をどれだけ届けられたか、「レゾナンス」は広告の種類によってどれだけ好意度や認知を上げられたか、最後の「リアクション」は具体的な効果、売り上げや行動変容がどれほどあったのか、というもので、これら3つはつなげて考えるのではなく、切り離すべきだとする。「GRP(延べ視聴率)やインプレッションの成果が大きく上がったからといって、全ての広告キャンペーンにおいてクリエイティブ関係なしに等しく認知効果が上がるものではない」からだ。
しかしヤフーの高田氏も、ブランド力向上を課題に掲げている企業などから、「どのくらいの人に(広告を)届けられるかよりも、想定クリック率はどれくらいかを聞かれることが多い」という。
Yahoo Japan!はおよそ6000万人の利用者を抱えているというが、そこに何を届けるかは別の議論として考えなければならない。「どんなクリエイティブを作ったら効果が上がるか、過去の事例も出せる。そこを改めて伝えたい」と話す。
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