グーグルはマイクロモーメントを「インターネットユーザーを含む生活者が『何かをしたい』と思った瞬間に、目の前のデバイスを使って行動を起こす際の、生活者の意図が垣間見える瞬間」といった意味に定義している。マーケターの立場では、マイクロモーメントを適切に捉えて、生活者に対して、いかに素早く関連性の高いメッセージを伝えられるかが重要といえる。
グーグルの水谷氏は、マイクロモーメントの考え方を通じた広告運用を理解するための5つの視点――リーチ、ターゲット、アドフォーマット、メジャメント、シンプリフィケーション――を“海釣り”に例えて説明した。
「リーチは、岸から釣るのか、それとも大海原に船を出して魚群を追うのか。ターゲットは、釣りたいものがイカなのかイワシなのか、それともマグロなのか。アドフォーマットは、たとえばマグロを釣りたい時に、魚をエサにして釣るのか、ルアーで釣るのか。メジャメントは、マグロを釣るにしても『量』や『重さ』など、自分のゴールとする指標をどこに置くのか。そしてシンプリフィケーションは、海に出て釣りをするのに、やみくもに針を下ろすのか、それとも最新の魚群探知機のようなものを使って、スイッチを押すだけで自動で釣れるようにするのか」(水谷氏)。
広告運用で良質なトラフィックをモバイルサイトに誘導したところで、ランディングページのユーザーエクスペリエンス(UX)が不十分であれば、十分な効果は期待できない。「ポイントは、広告を運用した後のモバイルサイトがしっかり準備できているか」(同氏)。
そこで水谷氏は、最新のケーススタディとして、LCC航空券の比較サイト「スカイチケット」を紹介した。約1年前にモバイルサイトのUXを改善するプロジェクトを立ち上げて、グーグルが提唱する「モバイルサイト設計25の指針」にもとづいて改善を重ねたところ、ウェブページのロード時間が22%早くなり、サイトの離脱率が39%改善、モバイルでのコンバージョンレート(CVR)が18%改善したという。モバイルでのコンバージョンがとれるようになった上でさらに自動化を進めて、モバイルのコンバージョンが昨対比で2.5倍近くまで伸びたそうだ。
パブマティックが四半期ごとに実施している調査によれば、グローバルでは現在、モバイルのインプレッション単価(CPM)がデスクトップのCPMより34%高い。また、プライベートマーケットプレイス(PMP)を活用している場合には、デスクトップは非PMPに比べて2~3倍の違いがある一方、モバイルは4~5倍の差が開いているという。
この結果から読み取れることとして、パブマティックの前川氏は「マーケター自身が、さまざまな施策を通じて、よりパーソナライズされたエクスペリエンスを求めている」と分析する。「オーディエンスに適切にリーチしたいというニーズが高いから、モバイルは海外で受けているし、主流であると我々は考えている」(同氏)。
具体的には、モバイルのプレミアム性――アプリ在庫であること、デバイスIDが取得できること、透明性があること、位置情報が取得できること、リッチメディア対応であること――が特に“取得できる情報”で左右される傾向が浮き彫りになっている、と前川氏は指摘する。
「デジタルマーケティングが、O2Oを含めて、ますますパーソナライズされた施策になってきている。IoTの流れもあり、モバイルという存在は捨てられない。かつ、インプレッションといったボリュームの話ではなくて、ユーザー像であったり、データに付随したセグメンテーションの話であったり、リーチのファクターが率先して活用されている」(同氏)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス