ワトソン・クリックの中治氏は、冒頭で自ら「なぜ呼ばれたのか分からない」と話すほど、今回のセッションでは異色の「成功者」だった。参考に挙げたサンポールのCMは、トイレ洗浄剤のリブランディングを目的としたもので、テレビCMのプランナーである同氏としては初めて制作したウェブ動画でもある。便器のキャラが歌をうたう、その名も「ベンキー・シロイシのワンマンライブ」というタイトルだ。
当初は15秒テレビCMの企画発注だったといい、ウェブ動画の話はなかった。予算も少なく、有名人が歌をうたうという案も出たものの、結局は自らが歌うことに。電通のADが絵を描き、もう1人のプランナーの計3人で全てを制作することになったが、「歌詞をたくさん考えたら5曲できた」とのことで、「もったいないから」5曲全てを収録したロングバージョンをウェブ動画として公開することにしたという。
もちろんプロモーションもしなかったが、成果も「特になし」。再生回数はわずか2万ほどで、それでもTCC賞(東京コピーライターズクラブ)と、2015 55th ACC CM FESTIVAL(全日本シーエム放送連盟)でACCゴールドを受賞する結果となった。「クライアントは特に喜んでいない(ように見えた)。でも見せたら今まで見たことないほどウケた」という。
賞として評価された理由については、「ゆるいからじゃないか。(クリエイターユニットの)スネークマンショーというのが80年代にあって、そういうジャンルのものが今はない。(今は)工夫されているものがほとんどなので、そこに隙間があったんじゃないか」とひょうひょうと語る。
ウェブに比べた時のテレビCMの強さについては、「なんといってもスピード。誰も知らないものを、テレビだったら3カ月で認知度を50%くらいにできる。1年後には70%くらいになる。ウェブだと全く無理。1晩に1000万人が見ることができる、そのスピードが唯一、最も優れているところじゃないか」と語った。
終わりに同氏は、メディアクリエイターの佐藤雅彦氏が1990年代にすでに言っていたという「テレビCMはクライアントがOKを出すのではなく、お茶の間がOKを出さないといけない」という言葉を引き合いに出しつつ、「テレビ、地上波は曲がり角と言われて久しいが、これから次々に出てくるインターネットでの成功事例がテレビに逆流する。その手法、内容、コンテンツ化する方向性、コマーシャルを見せる枠をどう作るかなど枠組みの考え方も含め、テレビ局がウェブに学ぶという流れが10年以内に訪れて、うまく融合するのがいい」とコメントした。
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