顧客の心に火をつけるデータ活用

クチコミデータ活用時に知るべき「アドボケーツ」とは - (page 3)

本気の推奨は顧客の心に火をつけるのか

 1点目は、NPS(Net Promoter Score)という推奨度を表す指標について。「友人・知人に流山市へ住むことを推奨するとし、最大10点最小0点にした場合、何点でしょうか? またその理由は?」というアンケートを実施し、推奨したい気持ちを11段階で測りました。この調査手法は、組織への忠誠心を推し量る際に有効で、ここ最近その注目度が高まっています。

 結果的には、「より推奨度が高い方はよりポジティブで詳細なクチコミを、推奨度が低い人はネガティブなひと言二言」を発信することがわかりました。これ自体は日常生活と照らすと当たり前の感覚ではありますが、流山市と他市との違いが明瞭だったのは印象的でした。また、その理由が、流山市が伝えている子育て支援のメッセージと合致している点に、シティプロモーションとしての成果を感じました。


NPS分布図

他市比較

 なお、NPSおよびNet Promotor Scoreはベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。NPSの算出方法は、まず推奨度を10点~0点の11段階で尋ね、次に10~9点をつけた顧客を「推奨者」、8~7点を「中立者」、6点以下を「批判者」(6~0)と分類し、さらに推奨者の割合(%)から批判者の割合(%)を引きます。その引き算した数値をその企業のNPSと見なします(最小で-100 最大で100)。今回は、概観を掴むために、NPSを算出せず「推奨度」で研究を進めました。

 2点目は、コンテキストの重要性。仮に、ユーザーがクチコミを通じてブランドの魅力を推奨しても、発言時の姿勢や態度によって、影響力が変わることがわかりました。クチコミをコンテンツとコンテキストに分けたときに、コンテンツだけでなくコンテキストも重要性が高いと結論づけられることが実証されました。いくつか事例に触れてご説明します。


クチコミ比較事例:話し手の推奨度違い

クチコミ比較事例:子育てに触れる触れない違い

 上の2つの画像は、子育て文脈でクチコミが伝わることで、影響力が大きいことを示しています。また、下の画像では、推奨する話し手の推奨度によって、受け止め方が変わるのを鮮明に表しています。


推奨する話し手の推奨度によって、受け止め方が変わる

 3点目は、広告とクチコミの相乗効果です。クチコミが有効だということが証明されればされるほど、広告は不要なのかという議論に至ることがありますが、私たちの研究では「広告とクチコミの二刀流こそが効果的」ということを数字で結論付けました。

 そのように感じた理由を詳しくヒアリングすると2つの要因がありました。1点目は、ポスターはメッセージが端的でわかりやすく、クチコミは詳細でよさがより伝わってくるということです。もう1点は、「広告がクチコミと一致している」ことを感じての信頼感です。今回の調査委対象者はクチコミを見た後にポスターを見たわけですが、広告で訴えていることが確かに住民も感じていることだと伝わり、結果的に情報主体者への信頼醸成を助けました。


広告とクチコミの二刀流こそが効果的

 実務者の立場から言えば、クチコミと広告の二刀流は非常に現実的です。なぜならば、アドボケーツによる推奨コメントの影響力が注目されるものの、ポジティブなクチコミが伝播していくには時間がかかりますし、表現にも限度があります。何より本人からの発言ではないため、本気度や覚悟がわかりにくいという面もあります。あらゆるマーケティング主体者にとって、最も大切な資本のひとつである信頼を築き上げるためには、クチコミも広告も同時に活用しなければならないことが現時点では証明されたと言えそうです。

 それでは、次に調査結果を受けての私個人の見解を述べたいと思います。

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