顧客の心に火をつけるデータ活用

クチコミデータ活用時に知るべき「アドボケーツ」とは - (page 4)

結果をうけての個人的な考察

 研究によって、アドボケーツの重要性が再確認できました。彼らへのサービス体験を手厚くすることは必至と言えます。彼らの満足から発する推奨コメントは、影響力が強いクチコミとなり、ブランディング活動(今回は移住促進)を前進させます。また、伝える内容(コンテンツ)もさることながら、発言者の態度によって変容する伝わり方(コンテキスト)の重要性も明らかになりました。アドボケーツを活用したマーケティングをする上では、両方を重要視して施策へ臨む必要があります。

 また、業態や商材によって、コンテキストの違いをもっと活用できると感じたことは個人的に大きい学びでした。例えば、食べログやアマゾンのようなレビューサイトで感じるのは、いつも褒めまくっている人よりも、厳しい意見をお持ちの方のクチコミに耳を傾けるということです。

 それに比べ、移住は一生に数回のもの。意思決定には相当なストレスが掛かると思います。よって自分自身の意思決定を応援してくれるような力強いクチコミを求める傾向が強まり、高い満足度が優秀なクチコミの源になるということです。つまり、既存顧客に圧倒的な価値を提供し、そこからにじみ出るようなクチコミを広げていく方が、新規顧客へのマーケティングよりも効果・効率的な可能性が高いということです(これに関しては、後編で流山市の事例を紐解きましょう)。

 私は、今回の研究結果は移住のみならず、観光にも生かせると考えます。とある有名リゾートの代表も、クチコミはマーケティング上の重要課題と言及し、現時点ではサービスを不満足に感じた一部の方が声高にネット上でのネガティブなクチコミを広めている状況です。

 新規顧客は少数であってもネット上にその手のクチコミがあれば躊躇するでしょう。同時に、その手のネガティブなクチコミの多くは、ブランドとユーザーとの期待値のズレ(ミスマッチ)の時に生じるものですから、リピートを望んでいないような顧客から苦情を言われるのは悔しいの一言に尽きるかと思います。

 ただ、現実的には、ネット上でネガティブなクチコミをゼロにすることは、どのブランドであっても不可能です。また、満足度が高くとも「サイレントマジョリティ」という言葉があるように、アドボケーツ活用においては構造的な問題があります。よって、それらをかき消すほどポジティブな推奨コメントが溢れるようにしなければなりません。マーケティング巧者と言われるそのリゾートチェーンでさえも途上だとするならば、私たちマーケターたちは、今後サイレントな満足客をアドボケーツに変えていく必要があります。その際、今回の研究結果がすこしでも参考になればと思っています。

 では、後編から、本調査結果からの学び・気づきについて、人口移入やNPSにおいて確実な成果をあげている流山市役所のメディアプロモーション広報官・河尻和佳子氏の言葉も交えながらご説明します。

廣部 嘉祥

クチコミマーケティング協議会(WOMJ)メソッド委員会所属 個人会員
コンテキスト・エディター

2007年よりデジタルエージェンシーへ入社後、ファッション、ホテル、ITサービス、製薬等各種グローバル企業のデジタルマーケティングからPRプランニングまでを担当。2012年よりメソッド委員会に所属し、2015年夏より現職。

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