顧客の心に火をつけるデータ活用

効率的に失敗することがマーケティングの要諦

 「データ」はマーケティングの成功の定義を変えました。なぜならば、データがあればより効率的に失敗できるからです。変化がデフォルトのデジタル社会では、小さい失敗を効率的にし、大きい過失を避ける必要があります。“前回うまくいったから”が今回それを実施する理由にはなり得ません。

 成否を分かつ様々な要因は変化し続けています。そのためには、失敗から学び得るノウハウ(生活者インサイトなど)を未来への糧とすべきです。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」とはよく言ったもので、データに耳を澄まし耳の痛い話から改善を図ることが、データ時代においてマーケティングを成功へ導く1つの方法だと考えます。

 PC1台でサービス開発ができ、全世界の顧客とつながれる現代のビジネス環境下では、データをもとに正しく判断する「正確性」と、その糧を早く得て実行に移す「スピード」は絶対要件です。仮に、マーケティングのマイルストーンを進め、新たに起きる出来事から成功(もしくは失敗)のノウハウをデータとして入手できれば、「データの入手→考察→活用」といった循環を駆動させられます。明日は、もっと成功を収める日か、もう同じ失敗は繰り返さない日のどちらかになりそうです。

 一方、悲惨なのはデータがない状況。それでは仮説を立案できず、実行スピードは落ち、自信の拠り所さえも失います。たとえば、24時間休むことなく来客のある「EC」や会話が途絶えない「ソーシャルメディア」。データの好循環の有無によって、トップページのレイアウトやコミュニケーションのトーン&マナーなど、翌日の打ち手は全く異なるものになるはずです。長期視点で考えると、この両者の描く成長曲線の間にはとてつもない差が生まれることは誰もが思いつきます。

 これだけ重視されている「データ」に対して、世界はどのように向き合っているのでしょう。

データは21世紀の新たな資源

 マーケティングに限らず、ビジネス全体においてもデータは主役になりつつあります。Googleのチーフエコノミストが「これから先10年で、最もセクシーな職業は統計学者だ」と語ったのは、非常に有名なエピソードです。 “セクシー”という言葉の真意には、いかにもシリコンバレーらしい希少性を尊ぶ思想を感じます。さらに、米国ではその希少性や潜在性に着想してこのようにも言われています。――「データは21世紀の新たな資源」ではないかと。


 資源というと随分大げさに聞こえるかもしれません。おそらく、目に見える鉄や石油を連想するからでしょう。ただ資源には、人の持つ創造性や情熱的なチームワーク、ブランドなど目に見えない経営資源も存在します。それと同列にして、このデジタル時代に存在感を高めているのが、データです。

 資源とは、より多く保有することに価値があり、その資源自体でレバレッジが効くものです。そのような背景から、勝者はより勝者に、弱者はずっと弱者といった構図を描くデータは、資源と言えるのではないかと私は考えます。かつて「鉄は国家なり」と叫ばれたのと同様に、データは21世紀のビジネスにおける新たな資源です。

 では、データを味方につけるにはどうすればいいのか。その前に、国内外のデータへの取り組みを俯瞰してみます。

世界のビッグデータ最前線

 日本はビッグデータの最前線のどの辺りに位置しているのでしょう。そして、マーケティング先進国・米国やいかに。実は、米国で「セクシーな職業」と唱えられ始めたのは2009年のことです。日本ではここ3年位で語られ始めたように感じる方もいるかもしれませんが(CNET Japan読者では極少数だとは思いますが)、米国ではもう6年も前に話題に上がっていました。


 ここに「ビッグデータ」および「Big Data」の検索数の時系列データがあります。Googleトレンドを用いて図解しました。まさにInfographicと言える、示唆に富むグラフだと思います。どの国が先進的なのか、いつから国内外で着目され始めたのか、一目瞭然。(個人的には、人口が関係しているけれども1位のインドには驚きました。さすが、「0(ゼロ)」という概念を生み出した理系大国ですね。)

 ここで注目したいのは、2013年以降ずっと低空飛行を続ける日本です。もうすでに、「ビッグデータの可能性」「データ活用の手法」は社会に十分に認知され、企業経営やマーケティング戦略に有用に使われているのでしょうか。いいえ、現場で皆さんがお感じの通り、いまだ発展途上です。

 ミクロな視点に切り替えましょう。米国には、世界中のデータサイエンティストを抱えたプラットフォーム「Kaggle」があります。企業や研究者が課題とデータを投げかけ、登録しているデータサイエンティストが解くといった「コンペ」や、データサイエンティスト職を公募している「求職情報」などがあり、層の厚さを感じずにはいられません。

 実際には、2015年9月時点で、世界194カ国、37万人以上の国境なきデータサイエンティストが登録しているそうです。日本ではまだ同様のサービスは見受けられません。ただし、Kaggleがあるからと言って米国でも十二分に人材がいるかと言えば、そうではありません。米国でもいまだ希少な人材の代表例です。


 では、なぜ世界で、そして日本でビッグデータ活用が進まないのでしょうか。その原因について少し触れます。

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