ECサイトや企業サイトを閲覧している時、どれくらいスクロールやクリックをしているか、またどのタイミングでページを離脱しているのかを意識している人は少ないだろう。しかし、サイト運営者が知りたいのはこうしたユーザーが無意識にしているアクションであり、そこから問題点を見つけ出して、サイトの回遊や購買率の改善につなげたいと考えている。
「サイト改善は“勘と経験”から、事実ベースの“データドリブン”へ移行しなければいけない」――こう語るのは、クロス・マーケティング子会社のUNCOVER TRUTHのCOOである小畑陽一氏。同社では、ヒートマップでサイト内でのユーザーの行動を可視化する分析ツール「USERDIVE(ユーザーダイブ)」を提供している。サービス開始からわずか2年間で、JALや花王など大手企業を中心に230サイトに導入されているという。
企業が自社サイトにUSERDIVEの専用タグを導入すると、サイトを訪れたユーザーのマウスの動きやスクロールの範囲などをヒートマップで把握できるようになる。ヒートマップとはサーモグラフィのようなもので、多くのユーザーが閲覧していたりマウスオーバーしている箇所は赤く、そうではない箇所は青く表示されるので、サイト内のどこでユーザーが行動を起こしているのかが一目で分かる。PCとモバイルの両サイトに対応しているという。
小畑氏は、ヒートマップによる分析をサッカー日本代表の試合に例える。「一般的なログ解析は、ボールのキープ率やシュート本数などの数値で分析する。これに対して、ヒートマップは、『長友が左サイドを走っている、香川がキープしている』といったことが一目瞭然になるため、数値で羅列されるよりも戦況をイメージして、対策も立てやすい」(小畑氏)。
ヒートマップは「マウス」や「スクロール」などアクション別に確認できる。たとえば「クリック」を選ぶと、ユーザーがサイト内でクリックした箇所が表示される。もちろん購入ボタンなどが置かれている箇所にはクリックが集中するが、もし何もない箇所をクリックしているユーザーが多ければ、デザインやコンテンツの位置を見直す必要があることに気づくことができる。
ただし、ヒートマップを見ただけでは分からないこともある。それはユーザーがどのような動きをして、最終的にそのアクションにいたったかということ。そこで活躍するのが「フィルタ機能」と「動画分析機能」だ。フィルタ機能は、ECサイトで商品を購入した人と、商品をカートに入れたけれど購入せずに離脱した人など、20近い条件でヒートマップの表示内容を切り替えられる機能。これにより、両者にどういった違いがあったのかをより詳しく比較できる。
動画分析機能は、ユーザーがサイト内でどのような動きをしたのかを動画で忠実に再現する機能。たとえば、購買までいたった人は、ページを最後までスクロールして個人情報の取扱いに関する項目を確認していた、といったことまで分かる。また、問い合わせフォームで先に本文を入力した人は途中で離脱してしまうけれど、先に氏名や住所を入力した人は最後まで入力することが多いといった傾向が分かれば、より成果にいたりやすい配置を考えるヒントにもなる。
USERDIVEの強みは、単に分析ツールを用意するだけでなく、サイト改善に向けたコンサルティングも併せて提供していることだと小畑氏は話す。同社ではまず、「Google Analytics」や「Adobe Analytics」などのトラフィック分析ツールで対象サイトへの流入数などを分析した後、USERDIVEのヒートマップ分析によってサイト内の問題点を発見。その上で、効果的な改善案を提案している。
ただし、これまでは改善施策やデザイン案などを提案するものの、実際の制作については依頼主に委ねるしかなかった。そこで、ABテストによってウェブサイトのUIを改善するサービスを運営するKaizen Platformと提携。これまで分かれていた分析と改善の工程をワンストップで実現する新サービス「Growth Hack One Stop」の販売を6月に開始した。
Growth Hack One Stopでは、USERDIVEで分析をした後、Kaizen Platformのクラウドソーシングを使って社外のデザイナーなどの“グロースハッカー”から、希望に沿った改善案を集められる。さらに、グロースハッカーによる高速なABテストの実施・運用までをアウトソースできることから、人材不足で思うようにサイト改善が進まないといった状況から抜け出せるという。なお、Growth Hack One Stopは、USERDIVEと並行して提供している。
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