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企業社員がNPOでボランティアを行う際の心構え

長浜洋二(NPOマーケティング研究所)2015年07月15日 15時36分
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 以前、このコラムで、企業がNPO主催のイベントへ協賛する際に留意するべき3つのポイントについて紹介した。その中で、イベントはNPOにとって企業以上にステークホルダー(利害関係者)との接点を構築するために重要である一方、企業として協賛する価値をしっかり見極めなければならないという主旨の指摘をした。

 このコラムに対する反響は思いのほか多く、中でもNPOに携わる方々から、逆に、企業がNPOに連携を持ちかける際の問題点についてもいくつかコメントを頂戴した。

 今回のコラムでは特に、企業の社員がNPOでボランティアを行う際の問題点についてお伝えしたい。

 まず、ボランティアをしようとするNPOがどのような社会課題に取り組み、どのような事業を手掛けているのかを事前に把握せずにボランティアを行っているケースがある。

 本業のビジネスであれば、協業パートナーについて事前に調べを怠ることはないだろう。ひょっとしたら、ボランティアは常に歓迎され、感謝されるものだという誤った認識がこのような行動に繋がっているのかもしれない。

 最近では、「ボランティア・デー」を設けている企業もあるが、受け入れ側のNPOでは、ともすると一度限りのボランティア作業のための準備に時間を取られ、緊急度の高い本来業務の妨げになっている可能性がある。こうした状況を考慮すれば、事前の調査不足は失礼極まりないといえる。

 次に、企業の中には、一方的に特定の日時や作業内容、急遽大量の社員ボランティアを派遣したいといったリクエストをするところがある。NPOの受け入れ体制や物理的なキャパシティなどの制約を考慮していないのだ。

 米国の事例ではあるが、社員が子どもたちと交流できるように特定の学校でのボランティアをリクエストするケースがある。あいにく受け入れる学校の中には、平日はボランティアが学校内に立ち入るのを禁止していたり、犯罪履歴のチェックを行ったりするところもあり、リクエストどおりにはいかないことがある。

 また、企業にとっては些細なことかもしれないが、週末にボランティアを行う場合、NPO側ではスタッフが休日出勤しなければならず、金銭的な負担も生じる。こうした状況に対して、NPO側では、支援を受けている企業から反感を買ったり、その企業のブランド力を活用できなくなったりするため、面と向かって伝えづらいこともある。

 近年、企業の人材開発の一環として、チームビルディングが注目されており、ボランティアはまさにうってつけの素材となっている。企業からは、チームビルディングや社会貢献に携わった実感が得られやすい清掃や修理など、成果が分かりやすいボランティア作業が好まれる。

 実際に、社員にとっても、NPOでボランティアを行うのは非日常であり、日頃のオフィスでのデスクワークから開放される喜びもあって充実感も得られ満足度も高い。

 しかし、企業ボランティアがやりたいことをやる場所がNPOではないし、企業のために不要なボランティア作業を作り出す必要もない。企業ボランティア側には、NPOは常にボランティアを必要としているという誤解があるのかもしれない。

 確かにボランティアを必要としているNPOは多くあるだろうが、肝心なのはその中身だ。企業は、事前にNPO側の都合を確認するとともに、NPOが本当に必要としていることが何なのかを把握しなければならない。その上で、社員ボランティアの保有するスキルを伝え、NPOのニーズとマッチングさせるのが適切な流れだ。

 一般的にNPOが企業に求めているものは、清掃や修理などの物理的な作業ではなく、会計やIT支援、広報やマーケティング、分析、デザインなどの事務的な作業であることのほうが多い。

 先のコラムで、NPOによる企業への提案は自己本位となりがちで、支援を行う企業側の立場に立っていないことが多いと指摘したのだが、同様のことが企業側でも起こっているということだ。企業とNPOの付き合いはまだ始まったばかりだ。

◇ライタープロフィール
長浜 洋二(ながはま ようじ)
NPOマーケティング研究所 代表。富士通勤務の傍ら、NPOマーケティングで社会を変える!『草莽塾』の主宰をはじめ、コンサルティングや講演活動を行う。米国にて公共経営学修士号を取得後、非営利シンクタンクでロビーイングやファンドレイジングなどに従事した経験を持つ。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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