先日、特定非営利活動法人かものはしプロジェクトという国際協力団体の総会にお邪魔する機会があった。
NPOにおける総会は、NPO法上、会員によって構成される会議で、法人の最高の意思決定機関であり、理事は最低年1回招集しなければならない。総会の主な内容は、決算案、事業報告、予算案、事業計画等の承認である。
企業でNPOの総会にあたるものが株主総会。あらためていうまでもないが、株主総会は株式会社の最高意思決定機関であり、株主を構成員とし、株式会社の基本的な方針や重要な事項を決定する場だ。
かものはしプロジェクトは、「子どもが売られない世界をつくる」をミッションに掲げ、カンボジアとインドで活動を行っている団体であるが、
の3つを事業の柱としている。
私はこのNPOの会員ではないが、誘われるがままに総会に出席したところ、150人を超える方々(会員含む)が参加していた。
有給スタッフは日本人が10人程度と、NPOの中では中堅の組織規模であるが、学生インターン・ボランティア30人の活躍により、これだけの規模の総会運営が可能となっているわけだ。
また、総会の実施に伴い、年次報告書を配布している。活動の目標や成果、進捗状況、KPI等を定量的に設定・測定し、その内容を詳細に記載することで活動内容をつまびらかにしている。
支援者に対して情報を包み隠さず共有することで、更なる支援を引き出すことが狙いだ。ちなみに、印刷は協力会社が無償で行っているそうだ。
総会の内容は、第1部が活動報告と中期経営計画の発表、第2部が2013年度計画に関する経営会議、第3部が議案議決という3部構成。
第1部では、インドの売春宿から少女を救い出す様子を捉えた映像に加え、現地の責任者含む3名の共同代表から、団体の活動についての報告があった。
第2部では、カンボジア、インド、そして、これら現地での活動に対する資金集め(ファンドレイジング)を行う日本の3拠点に分けて、主催者側と参加者が意見交換を行った。
自分が参加したのは日本のファンドレイジング部会であったが、司会者によるファンドレイジングの活動報告がひととおり終わった後、参加者を交えて、今後のファンドレイジングについての意見交換が行われた。
参加者にとっては、議論に参加するというかたちで、自分の経験や人的ネットワークが社会課題解決に役立つことを実感することができ、主催者側からするとこうした参加者の満足度向上が実利的にも支援の拡大や会員の更新率向上などにも繋がる。
個人が企業の株主となる理由としては、当該企業に対する愛着や純粋に応援したいという気持ちもあるだろうが、大半は投資目的であろう。
投資に対するリターンは、利息や配当などから得られるインカムゲインと、投資の元本の値上がりから得られるキャピタルゲインである。
一方、NPOに対する投資とは、寄付や会費などの金銭的な投資や、ボランティア、プロボノなどの労働力や時間の投資であり、リターンは当該NPOが取り組む社会課題の解決である。
昨今、経営陣に対し企業価値の向上に向けた戦略を積極的に提案する「物言う株主」の存在が注目されているが、投資家の多くは金銭的リターンが目的といっても過言ではないだろう。
こと株主総会に関しては、型どおりに当期の報告事項を終え、足早に決議事項を説明するのに加え、投資家の短期的な満足度を高めるために、行き過ぎたお土産や立食パーティ形式の懇親会を提供するなど、企業価値の向上という目的からは程遠いケースも散見される。
あらためて、企業にとっての株主総会の価値とは何か?
かものはしプロジェクトの総会にみるように、活動の内容を真摯に伝えたうえで参加者から忌憚のないフィードバックを得、スピード感を持って意思決定をしていくという当たり前のことが、企業の株主総会にも求められているように思う。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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